✨はじめに:金融機関選びが事業の成否を左右する理由

創業や資金調達において、金融機関の選定は事業者にとって極めて重要な意思決定のひとつです。どの金融機関から融資を受けるかによって、審査の通りやすさ、資金の調達スピード、利率の優遇、さらには今後の金融取引における信用度にも影響します。
特に創業直後の事業者は、実績が乏しい中で資金調達を行わなければならず、自身の事業の将来性や地域性などを汲み取ってくれる金融機関との関係構築が欠かせません。

当社からのアドバイス
この記事では金融機関から融資の融資を受けた事が無い資金調達初心者の方に向けて、各種金融機関の特徴や選び方について解説致します。
🏛金融機関の種類と特徴
事業者が利用できる金融機関は、大きく以下の3分類に分かれます。
◾政府系金融機関
政府出資の公的機関として設立され、主に中小企業や個人事業主への資金支援を目的としています。
- 日本政策金融公庫:創業支援、個人事業者向け融資、農林水産業支援などを担い、金利も低めで、審査基準が柔軟です。
- 商工組合中央金庫:協同組合やその構成員への支援がメイン。危機対応融資にも積極的。
- 沖縄振興開発金融公庫:沖縄県を対象とした地域特化型政策金融。
これらの政府系金融機関は、経済の安定や地域振興を目的として設立されており、特定の条件を満たす事業者にとっては非常に心強いパートナーになります。
◾民間金融機関
銀行や信用金庫・信用組合などの民間企業が運営する金融機関で、営利目的ですが地域支援にも力を入れています。
- 銀行:都市銀行や地方銀行は事業規模に応じた大口融資が可能。ネット銀行は手数料や金利が魅力。
- 信用金庫:地域密着型で中小事業者のニーズに応じた融資を柔軟に対応。
- 信用組合:原則として組合員のみを対象にするが、相互扶助の精神に基づいた支援を行う。
都市銀行と比較すると、信用金庫や信用組合は人間関係を重視し、事業者の将来性や地域性を踏まえた判断をしてくれるケースが多いです。
◾その他の金融機関
- ノンバンク:消費者金融や事業者金融、リース会社など。融資スピードが速いが金利は高め。
- 農業・漁業協同組合(JA・JF):特定業種の支援に特化。
- 労働金庫・ゆうちょ銀行・保険会社:特定層へのサービスが中心。
ノンバンクは急な資金需要に対応するには便利ですが、資金繰り計画がしっかりしていないと返済負担が重くなりがちです。
🔍金融機関の違いと選び方のポイント
金融機関の種類によって、融資の通りやすさや条件が大きく異なります。ここでは、選定ポイントを「創業時」「成長期」「安定期」のステージ別で明確に解説します。
📌選定ポイント一覧
判断軸 | 政府系(日本公庫) | 信用金庫/信用組合 | 地方銀行/都市銀行 |
---|---|---|---|
審査の柔軟性 | 高め(創業支援特化) | 中程度(地域密着) | 低め(実績重視) |
金利条件 | 優遇あり | 銀行と同等 | 市場金利に準ずる |
担保・保証人 | 不要のケース多い | 原則必要(信用保証協会経由) | 原則必要(担保重視) |
地元事情の理解 | ◯ | ◎ | △(全国基準) |
スピード | やや時間がかかる | 比較的スピーディ | 時間がかかる傾向 |
たとえば創業時に実績がない事業者が都市銀行に申し込んでも、融資は厳しく、対応も冷淡になることがあります。一方で信用金庫・組合は、担当者が地元企業と密接に関係しているため、ビジネスモデルを丁寧に理解してくれやすい傾向があります。
また、地方自治体の制度融資(例:神奈川県創業支援融資など)は、信用金庫や信用組合と連携しているケースが多く、利率や保証料負担の軽減が受けられることもあります。
🌱日本政策金融公庫の活用方法

当社からのアドバイス
結論から申し上げると、初めて事業資金の融資を受けようとお考えの個人事業主・零細企業・中小企業の方へオススメする金融機関は「日本政策金融公庫 国民生活事業部」の一択です。
理由はこれからの記事でご説明致しますので是非読み進めて下さい。
日本政策金融公庫は、創業期や小規模事業者が最も頼りにすべき政府系金融機関です。通常の銀行融資に比べて、信用保証や担保が不要なケースも多く、国として事業を後押しする役割を担っています。
🗂融資窓口の違いと特徴
日本公庫は、事業内容に応じて主に次の3つの窓口に分かれています。
窓口名 | 対象 | 主な役割 |
---|---|---|
国民生活事業 | 個人事業主・創業者・小規模事業者 | 創業支援・運転資金・設備資金など |
中小企業事業 | 中小・中堅企業 | 事業拡大、再編、設備投資の支援 |
農林水産事業 | 農業・漁業・林業従事者 | 農業機械購入、施設整備、資金繋ぎなど |
創業間もない事業者は、多くの場合「国民生活事業」の窓口での融資が対象となります。ここでは、「自己資金要件」「事業計画書の妥当性」「将来の収益見通し」などを重視した審査が行われます。
📎代表的な融資制度

◆新創業融資制度:個人事業主や法人設立後間もない方向け。保証人・担保不要のケースあり。
◆挑戦支援資金:新分野進出やDX推進などの新たな取り組みに対する資金支援。
◆女性・若者・シニア起業家支援資金:特定の属性に向けた手厚い融資制度。
これらの制度は、返済期間や金利条件が比較的優遇されており、創業時の不安定な資金繰りを支える強力な武器になります。
🎯取引を継続するメリット
継続的に日本政策金融公庫と取引をしていると、将来的に次のようなメリットがあります:
- 緊急時(災害・感染症など)に迅速な支援が受けやすい
- 過去の融資実績が信頼の証となり、追加融資のハードルが下がる
- 経営改善・資金繰り相談などの非金融サービスも受けられる
いわば“経営の伴走者”としての価値が高いため、創業期だけでなく、安定期以降も取引を継続する企業は多くあります。
🏘信用金庫・信用組合・銀行の比較と活用法
以下は主な比較ポイントです:
特徴 | 銀行 | 信用金庫 | 信用組合 |
---|---|---|---|
根拠法 | 銀行法 | 信用金庫法 | 中小企業等協同組合法 |
目的 | 国民経済の健全な発展 | 国民大衆の金融円滑化 | 組合員の相互扶助 |
組織 | 株式会社 | 非営利協同組織 | 非営利協同組織 |
対象 | 制限なし | 地域住民・中小企業 | 組合員のみ |
信用金庫・信用組合は、特に地元への支援姿勢が強く、経営者との信頼関係をベースにした柔軟な対応が期待できます。
⚠ 融資を受ける際の注意点と準備
融資申請は単なる事務手続きではなく、「金融機関との信頼構築の第一歩」と考えるべきです。そのためには、以下の要素を徹底して準備することが欠かせません。
📄事業計画書の作成ポイント
構成案(最低限必要な要素):
事業概要:誰が・何を・なぜ始めるのか
市場分析と競合比較:需要と差別化ポイント
収益モデルと売上見通し:数字に裏付けられた予測
資金の用途と返済原資:借入が必要な根拠と返済計画
自己資金の割合と出所:金融機関が最も重視する項目の一つ

🚫ありがちなNGポイント
- 自己資金がゼロ、あるいは曖昧
- 単なる希望的観測による売上予測(数字に根拠がない)
- 申請目的が「とにかく資金が欲しい」になっている
- 書類が雑で、事業者としての誠実さが伝わらない
実際、審査担当者が見ているのは「数字」だけではなく、「提出者が信頼できるかどうか」です。特に信用金庫や公庫などは「人物評価」も重視するため、見た目・言葉遣い・準備の丁寧さが大きな加点要素になります。
🧭まとめ:目的に応じた金融機関の選び方
融資は単なる資金調達手段ではなく、経営者としての信用構築の第一歩です。事業のステージに応じて最適な金融機関を選び、関係性を育てていくことで、いざという時の資金調達もスムーズに。
創業期に強い公庫、地域に根ざした信用金庫、拡大期に対応する地方銀行、それぞれの強みを活かして、自社の未来にフィットする金融パートナーを見つけましょう。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。