電気代や燃料費の上昇、人手不足、脱炭素への対応などを背景に、古くなった空調設備やボイラ、冷凍冷蔵設備、生産設備などの更新を検討している企業も多いのではないでしょうか。
こうした設備投資で検討したい制度の一つが、「省エネ・非化石転換補助金」です。
今回解説するのは、令和7年度補正予算の「省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」です。
対象となる設備や事業内容によって複数の事業区分があり、補助率は1/5以内から1/2以内、補助上限額は事業区分によって1億円から、電化を伴う事業では最大5億円まで設定されています。
この記事では、中小企業の経営者にも分かりやすいように、対象設備、補助率、補助額、主な申請要件を整理します。
省エネ・非化石転換補助金とは?
省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)は、省エネルギー性能の高い設備への更新や、電化・燃料転換、エネルギー管理システムの導入などを支援する制度です。
今回の公募要領では、大きく次の事業区分があります。
- (Ⅲ)設備単位型[従来枠]
- (Ⅲ)GX設備単位型[メーカー強化枠]
- (Ⅲ)GX設備単位型[トップ性能枠]
- (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型
- (Ⅳ)エネルギー需要最適化型
設備を更新するだけでなく、一定の事業区分では新設や水素対応設備への改造なども対象となっています。
3次公募の申請期間
3次公募の公募期間は、
2026年8月20日~2026年9月28日
です。
交付決定は2026年11月下旬が予定されています。
単年度事業の場合は、交付決定後に事業を開始し、2027年1月31日までに事業を完了する必要があります。
また、申請書類一式は2026年9月28日17時までに必着とされています。
補助事業ポータルへの入力だけでは申請完了とはならない点にも注意が必要です。
まず知っておきたい「設備単位型」
中小企業にとって比較的分かりやすいのが、(Ⅲ)設備単位型の従来枠です。
SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たす指定設備へ更新する事業が対象となります。
主な指定設備は次のとおりです。
ユーティリティ設備
- 高効率空調
- 産業ヒートポンプ
- 業務用給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率コージェネレーション
- 低炭素工業炉
- 変圧器
- 冷凍冷蔵設備
- 産業用モータ
- 制御機能付きLED照明器具
生産設備
- 工作機械
- プラスチック加工機械
- プレス機械
- 印刷機械
- ダイカストマシン
このほか、SIIが高性能設備として指定する設備が対象になる場合もあります。
設備単位型[従来枠]はいくら補助される?
補助対象経費は設備費です。
補助率は、
中小企業者等:1/3以内
です。
補助金額は、
上限:1億円/事業全体
下限:30万円/事業全体
となっています。
したがって、例えば高効率空調や冷凍冷蔵設備、ボイラ、生産設備などを省エネ性能の高い指定設備へ更新する企業では、まずこの従来枠を確認するとよいでしょう。
省エネ効果の要件
従来枠では、単に古い設備を新しい設備へ交換すればよいわけではありません。
指定設備へ更新し、次のいずれかの省エネ要件を満たす必要があります。
① 省エネ率10%以上
② 省エネ量1kl以上
③ 経費当たり省エネ量1kl/千万円以上
省エネ効果は原油換算ベースで確認されます。
2026年から「GX設備単位型」が拡充
今回の公募では、従来枠のほかにGX設備単位型が設けられています。
メーカー強化枠
GX要件を満たしたメーカーの指定設備へ更新する事業です。
従来枠と同様に設備更新を行いますが、メーカー側にもGX要件が設定されています。
補助率は1/3以内、補助上限は3億円/事業全体、下限は30万円です。
GX設備単位型[トップ性能枠]
さらに、高い省エネ性能を持つ「トップ性能設備」を導入する事業を対象とする枠があります。
GX要件を満たすメーカーの設備のうち、SIIが設置した第三者委員会が定めるトップ性能基準を満たした設備が対象です。
更新の場合
補助率:1/2以内
新設の場合
補助率:1/5以内
補助上限額は3億円/事業全体、下限は30万円です。
トップ性能設備として、公募要領では高効率空調、産業ヒートポンプ、高性能ボイラ、低炭素工業炉、産業用モータなどが示されています。
例えば高効率空調については、高い省エネ性能を持つ空調本体に加え、クラウド上の高度なAI制御によってさらなる省エネを図る設備などが示されています。
電化・脱炭素燃転型とは?
省エネだけでなく、化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換を行う設備投資を対象とするのが(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型です。
対象設備として、
- 産業ヒートポンプ
- 業務用ヒートポンプ給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率コージェネレーション
- 低炭素工業炉
などが示されています。
2026年の3次公募では、水素対応設備の導入・新設や、既存設備を水素燃焼可能な設備へ改造する事業も対象とされています。
電化・脱炭素燃転型の補助率
更新・改造の場合、
中小企業者等:1/2以内
です。
補助対象経費には設備費のほか、一定の場合には付帯設備や工事費も含まれます。
工事費は中小企業者等に限られます。
補助上限額は、
3億円/事業全体
ですが、電化する事業の場合は5億円/事業全体です。
下限額は30万円です。
電化・脱炭素燃転型でも省エネ要件がある
更新・改造事業では、次のいずれかを満たす必要があります。
① 省エネ率10%以上
非化石化の場合は、省エネ率と非化石転換率を合わせて判定します。
② 省エネ量1kl以上
非化石化の場合は、省エネ量と非化石使用量を合わせます。
③ 経費当たり省エネ量1kl/千万円以上
とされています。
エネルギー需要最適化型とは?
(Ⅳ)エネルギー需要最適化型は、SIIに登録されたEMSを導入して、エネルギー使用状況を把握・分析し、運用改善を行う事業です。
EMSとは、設備や工程のエネルギー使用量を計測・管理し、効率的な運用につなげるためのエネルギーマネジメントシステムです。
公募要領では、
- エネルギー消費状況の把握
- 表示
- 分析
- 運用改善
などを行うことが求められています。
また、EMSを活用した省エネ計画を作成し、改善成果を公表することも求められています。
中小企業者等の補助率は1/2以内、大企業・その他は1/3以内。
補助上限は1億円、下限は30万円です。
AIを使ったエネルギー管理も対象になり得る
高度型EMSには、AIを活用するものもあります。
公募要領では、
- AIが実際の稼働状況を学習する
- 設備の設定を自動的に最適化する
- 収集したデータをAIが学習する
- 最適な稼働状態を自動算出する
といった高度型EMSが示されています。
どのような事業者が対象?
中小企業者のほか、
- 個人事業主
- 中小企業団体等
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 学校法人
- NPO法人
なども一定の条件で対象になります。
会社法上の会社以外の法人については、従業員300人以下という条件が示されています。
また、個人事業主については青色申告者に限るとされています。
どんな設備更新が検討しやすい?
例えば、
「古い業務用エアコンを高効率空調へ更新したい」
「工場のボイラを高性能なものへ更新したい」
「古い冷凍冷蔵設備を省エネ設備へ変更したい」
「工作機械やプレス機械などの生産設備を更新したい」
「ガスや油を使用している設備を電化したい」
「EMSを導入して工場のエネルギー使用量を管理したい」
といった設備投資では、本補助金を検討できる可能性があります。
ただし、実際に対象となるかは、設備が指定設備に該当するか、省エネ要件を満たすかなどを確認する必要があります。
補助対象にならない費用にも注意
特に設備単位型では、対象経費の範囲を確認することが重要です。
例えばGX設備単位型のメーカー強化枠では、補助対象は原則として設備費のみです。
配線、配管、オプション設備などは対象外です。
また、
- 設計費
- 運搬費
- 既存設備の撤去費・廃棄費
- 据付費・工事費
- 配線・配管等の材料費
- 消費税
なども補助対象外とされています。
ただし、事業区分によって対象経費は異なるため、必ず申請する事業区分ごとに確認してください。
交付決定前に発注してはいけない
非常に重要なのが設備の発注時期です。
公募要領では、交付決定前に既に発注等を完了した事業は補助対象にならないとされています。
3次公募では、交付決定は2026年11月下旬予定です。
そのため、補助金の利用を予定している設備については、申請前に発注時期を十分確認する必要があります。
原則として3者見積が必要
設備価格についても注意が必要です。
例えばGX設備単位型では、補助対象設備について原則として3者以上による価格競争等を実施した結果の最低価格を上限とするとされています。
申請を検討する場合は、設備業者への相談を早めに進めておくことが大切です。
申請は原則「事業所単位」
申請は原則として、エネルギー管理を一体で行っている事業所単位で行います。
省エネ法の定期報告を行っている企業であれば、その定期報告書内の事業所単位。
それ以外の場合は、電気・ガス・油等のエネルギー契約を行う事業所単位が基本となります。
3次公募のスケジュール
主なスケジュールは次のとおりです。
公募期間
2026年8月20日~9月28日
交付決定
2026年11月下旬予定
事業開始
交付決定後
単年度事業の事業完了
2027年1月31日まで
実績報告
事業完了日から30日以内、または2027年2月5日のいずれか早い日
となっています。
まとめ
省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)は、古い設備を省エネ性能の高い設備へ更新する企業だけでなく、電化、低炭素燃料への転換、水素対応設備、EMS導入など幅広い設備投資を支援する制度です。
特に中小企業が検討しやすいのが、
- 高効率空調
- 冷凍冷蔵設備
- ボイラ
- 産業用モータ
- 工作機械
- プレス機械
- 印刷機械
などの設備更新です。
一方、事業区分によって、
- 対象設備
- 補助率
- 補助上限額
- 対象経費
- 省エネ要件
- GX要件
が大きく異なります。
「設備を更新する予定だから対象になる」と判断せず、導入する設備がどの事業区分に該当するのかを最初に確認することが重要です。
なお、本記事は「令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)3次公募」の公募要領をもとに作成しています。
申請時には必ず最新の公募要領をご確認ください。
