人手不足に悩む中小企業にとって、設備やシステムを導入して業務を自動化・省力化することは重要な経営課題の一つです。
こうした中小企業の省力化投資を支援する制度が、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」です。
第8回公募要領では、人手不足に悩む中小企業等が、IoT・ロボットなどのデジタル技術を活用した専用設備を導入し、生産・業務プロセスやサービス提供方法を省力化するための投資を支援する制度とされています。
この記事では、第8回公募要領をもとに、対象となる企業、補助金額、補助率、対象経費、主な要件などを経営者向けに分かりやすく解説します。
中小企業省力化投資補助金(一般型)とは
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業等が、省力化につながる設備やシステムを導入するための費用の一部を補助する制度です。
単に新しい機械を購入することが目的ではありません。
設備の導入によって、
- 生産工程を省力化する
- 業務プロセスを省力化する
- サービス提供方法を省力化する
- 省力化によって生まれた人員や時間を有効活用する
- 付加価値や労働生産性を向上させる
- 賃上げにつなげる
といった事業計画が求められます。
公募要領では、ICT、IoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、事業者の業務に合わせて専用に設計された機械装置やシステムを「オーダーメイド設備」と定義しています。
補助金はいくら受けられる?
補助上限額は、常勤従業員数によって異なります。
| 従業員数 | 通常の補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
カッコ内の上限額を利用するためには、大幅な賃上げに関する特例要件を満たす必要があります。
補助率は?
基本的な補助率は次のとおりです。
中小企業:1/2
小規模企業者・小規模事業者:2/3
再生事業者:2/3
また、一定の最低賃金引き上げ要件を満たす中小企業については、補助率を2/3へ引き上げる特例があります。
小規模事業者については、製造業その他・宿泊業・娯楽業は常勤従業員20人以下、卸売業・小売業・サービス業は常勤従業員5人以下などの基準が定められています。
どのような企業が対象になる?
対象となるのは、主に生産・業務プロセスやサービス提供方法の省力化を行う中小企業等です。
応募申請時点で日本国内で法人登記等がされ、日本国内で事業を営み、日本国内に本社と補助事業の実施場所を有していることなどが求められます。個人事業主も対象に含まれます。
さらに重要なのが、実際に設備を設置する場所です。
補助事業の実施場所となる工場・店舗等を特定していることが必要で、交付申請時点で建設中の場合や、土地だけを確保してこれから建設する場合は対象外とされています。
どのような設備が対象になる?
一般型では、人手不足の解消につながる省力化設備・システムを導入します。
中心となるのは、事業者の業務内容や作業工程、事業所の構造などに合わせたオーダーメイド設備等です。
例えば汎用設備であっても、
- 導入環境に合わせて周辺機器を組み合わせる
- 必要な機能を追加する
- 複数の設備を組み合わせる
ことにより、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合には、対象となる場合があります。
一方、汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象になりません。
対象になる経費
対象経費は次のとおりです。
機械装置・システム構築費
これは必須経費です。
省力化を実現するための機械装置や専用システムなどが中心になります。
運搬費
補助事業に必要となる運搬料、宅配・郵送料等が対象となります。
技術導入費
補助事業を実施するために必要な知的財産権等を外部から導入する場合などの費用です。
知的財産権等関連経費
生産・業務プロセスの改善等に必要な特許権等の取得に関する費用の一部が対象になります。
外注費
専用設備の設計など、補助事業の一部を外部へ依頼する場合の費用です。
専門家経費
補助事業の実施に必要な専門家による技術指導・助言等の費用です。
クラウドサービス利用費
補助事業専用として利用するクラウドサービスやWEBプラットフォーム等の利用費も対象となります。
ただし、補助事業実施期間中に必要な費用に限られるなど条件があります。
なお、「機械装置・システム構築費」以外の経費については、総額500万円(税抜き)までが補助上限とされています。
対象にならない主な経費
何でも補助対象になるわけではありません。
例えば次のような経費は対象外です。
- 交付決定前に発生した経費
- パソコン・タブレット・スマートフォン等の本体費用
- 自社の人件費
- 既存システム等の単なるバージョンアップ
- 土地・建物等の不動産取得費
- 設備設置場所の整備工事・基礎工事
- 家賃、保証金、敷金、光熱水費
- 一般的な通信費
- 文房具などの消耗品
- 自動車等の車両の購入費等
特に注意したいのが、交付決定前の発注・購入などの事前着手は認められていないことです。
また、土地・建物の取得や基礎工事なども対象外です。
主な申請要件
この補助金では、単に設備を導入するだけではなく、3~5年間の事業計画を策定する必要があります。
主な基本要件は次のとおりです。
1.労働生産性を年平均4.0%以上向上させる
事業計画期間において、基準年度と比較した労働生産性の年平均成長率を4.0%以上向上させる計画を策定します。
2.1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる
事業計画期間終了時点で、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる計画が必要です。
設定した目標値を達成できなかった場合には、達成率に応じて補助金の返還を求められる場合があります。
3.事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とする
原則として、事業計画期間中、毎年、補助事業を実施する事業場の最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準とする必要があります。
4.一定の企業は一般事業主行動計画を公表する
従業員21名以上の場合、交付申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく有効な一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表する必要があります。
省力化効果を数字で示す必要がある
一般型では、「設備を入れれば便利になる」という説明だけではありません。
公募要領では、
- 省力化指数
- 投資回収期間
- 付加価値額
- オーダーメイド設備等による人手不足解消
について計画を作成することが求められています。
省力化指数とは、設備導入前に必要だった作業時間と、導入後に必要となる作業時間を比較して、どの程度業務時間を削減できるのかを示す指標です。
そのため、申請前には「現在どの作業に何時間かかっているのか」を把握しておくことが重要です。
カタログ注文型との違い
中小企業省力化投資補助金には「カタログ注文型」もあります。
第8回一般型の公募要領では、一般型を検討する前にカタログ注文型の製品カタログを確認するよう案内されています。
カタログに掲載された製品は、すでに国が省力化効果を認めた製品であり、カタログ注文型は一般型と比較して申請が迅速かつ簡易であるとされています。
一方、一般型では、省力化効果、付加価値向上、投資規模の妥当性、設備のオーダーメイド性などを総合的に審査するため、カタログ注文型より審査項目が多くなります。
申請にはGビズIDプライムが必要
申請は電子申請で行い、GビズIDプライムアカウントが必要です。
アカウントの取得には一定期間を要するため、申請を検討している場合は早めの準備が必要です。
第8回公募要領では具体的な申請受付開始日・締切日は記載されておらず、事業ホームページで公開するとされています。
申請時にはどのような資料が必要?
全事業者共通の主な書類として、
- 直近2期分の損益計算書
- 直近2期分の貸借対照表
- 事業計画書
- 50万円以上の導入予定機械・システムについて仕様や積算根拠が分かる書類
などが求められます。
法人の場合は履歴事項全部証明書や納税証明書など、個人事業主の場合は確定申告書等も必要です。
どのような企業に向いている?
公募要領の制度目的や要件からみると、
人手不足という具体的な課題があり、設備やシステムを導入することで作業時間を削減し、その効果を数字で説明できる企業
が制度の対象を検討しやすいといえます。
特に一般型では、単体の汎用設備を購入するだけではなく、自社の工程や業務に合わせて設備・システムを組み合わせ、省力化効果や付加価値向上につなげる事業計画が重要になります。
採択されれば必ず申請額がもらえるわけではない
採択は、申請した補助対象経費全額について補助金の交付を確定するものではありません。
採択後に改めて交付申請が行われ、経費内容などが審査されます。その結果、対象外経費が含まれていれば、交付決定額が減額されたり、対象外となったりする場合があります。
また、補助金額の確定に際しては現地調査が行われ、補助対象設備や証憑類を確認できない場合、その設備に関する金額は補助対象になりません。
まとめ
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に対応するため、省力化につながる設備やシステムを導入する中小企業等を支援する制度です。
補助上限額は従業員規模によって750万円から8,000万円、大幅賃上げ特例を利用した場合は最大1億円となります。
一方で、労働生産性、給与、最低賃金、省力化効果、投資回収期間など複数の要件があり、単なる設備購入を対象とする補助金ではありません。
設備を検討する段階から、
「現在どの工程に人手がかかっているのか」
「設備導入によって何時間削減できるのか」
「省力化によって生まれた人員や時間をどのように活用するのか」
を整理しておくことが重要です。
詳細については、必ず最新の公募要領・公式情報をご確認ください。
