補助金申請において、審査員が最も重視するのは「事業の具体性」「独自性」です。
どれだけ革新的なアイデアであっても、誰に向けて、どのように提供するのかが曖昧では、事業の実現可能性や社会的意義が伝わりません。

そこで活用したいのが「STP分析」。
マーケティングの基本フレームワークであるSTP分析は、事業の対象顧客を明確にし、競合との差別化を図るための強力なツールです。
本記事では、STP分析の基本から、補助金申請にどう活かすかまでを、実務目線で解説します。


STP分析は、以下の3つのステップで構成されます:

① セグメンテーション(Segmentation)

市場を細分化する工程です。
顧客を年齢、性別、地域、職業、ライフスタイル、価値観などの軸で分類し、ニーズの違いを把握します。

例:フィットネス市場を「若年層向け」「高齢者向け」「女性専用」「リハビリ目的」などに分ける

この段階では、「どんな顧客層が存在するか」を広く捉えることが目的です。


② ターゲティング(Targeting)

細分化した市場の中から、最も魅力的な顧客層を選定します。
魅力的とは、ニーズが明確で、競合が少なく、自社の強みが活かせる層です。

例:高齢者向けフィットネス市場の中でも「要支援・要介護予備群」に絞る

補助金申請では、この「誰に向けた事業か」が明確であるほど、説得力が高まります。


③ ポジショニング(Positioning)

選定したターゲットに対して、自社のサービスや製品が「どのように差別化されているか」を明示します。
競合と比較して、価格、品質、利便性、専門性などの面で優位性を打ち出します。

例:一般的なフィットネスとは異なり、「医療・介護連携型の安心サービス」であることを強調

このポジショニングが明確であるほど、事業の独自性が伝わりやすくなります。


補助金申請書にSTP分析を活用することで、以下のような効果が期待できます:

✅ セグメンテーション:市場ニーズの根拠を示す

「なぜこの事業が必要なのか?」という問いに対し、対象市場の構造を示すことで、客観的な根拠を提示できます。
特に地域性や社会課題と絡めることで、公共性の高い事業として評価されやすくなります。

例:横浜市では高齢者人口が増加しており、運動習慣のない層が多い


✅ ターゲティング:事業の焦点を絞る

補助金申請では、事業の「実現可能性」が重要視されます。
ターゲットを絞ることで、限られた資源で最大の効果を出す戦略性が伝わります。

例:横浜市在住の65歳以上の要支援予備群に限定することで、訪問型サービスの効率性が高まる


✅ ポジショニング:競合との差別化を明示

「なぜこの事業が選ばれるのか?」という問いに対し、競合との違いを明確にすることで、事業の独自性が際立ちます。
補助金は「新規性」や「社会的意義」が評価されるため、差別化は極めて重要です。

例:既存のフィットネスは店舗型が中心だが、本事業は訪問型かつ医療連携がある


事業名:地域高齢者向け訪問型フィットネスサービス

  • S(セグメンテーション)
    横浜市在住の高齢者(65歳以上)、運動習慣がない層
  • T(ターゲティング)
    要支援・要介護予備群(介護認定は未取得だが、健康不安を抱える層)
  • P(ポジショニング)
    医療・介護連携型の訪問フィットネスサービス。既存の店舗型フィットネスとの差別化を図り、安心・継続性を提供
補助金の広場

説得力のある申請書作成が出来ずお困りの方へ
自社の事業について「何となく」「ふわっと」事業内容を申請書に記載しても採択される可能性は極めて低いです。
どのような内容を記載してよいかわからない方は、このSTP分析を活用することで、事業の「対象」「目的」「差別化」が明確になり、申請書の説得力が格段に高まります。是非ご活用下さい。


補助金申請においては、「誰に向けた事業か」「なぜ選ばれるのか」を明確にすることが不可欠です。
STP分析は、事業の軸を言語化し、申請書の構造を論理的に整理するための有効な手段です。

事業のアイデアがある方は、まずSTP分析から始めてみてください。
それが、補助金採択への第一歩になるかもしれません。


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補助金の広場代表畠中

大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。