法人の設立や運営に関わる場面で、しばしば求められる「商業登記簿謄本」。金融機関への提出、補助金申請、契約時の信用確認など、さまざまな場面で必要になります。

これまでは法務局の窓口で取得するのが一般的でしたが、現在では法務局のオンライン申請システムを利用することで、自宅やオフィスから簡単に請求できるようになりました。

本記事では、商業登記簿謄本の基本的な知識から、オンラインでの請求方法、注意点までをわかりやすく解説します。(画像出典元:法務局)


商業登記簿の役割

商業登記簿とは、法人(株式会社、合同会社など)の基本情報を記録・公開するための公的な帳簿です。法務局が管理しており、誰でも閲覧・取得することができます。

登記簿には、以下のような情報が記載されています:

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 代表者の氏名
  • 資本金の額
  • 設立年月日
  • 役員の氏名と任期
  • 定款に関する事項(目的など)

証明書の種類

商業登記簿の内容を証明する書類には、主に以下の2種類があります:

証明書の種類内容の特徴
履歴事項全部証明書過去から現在までのすべての登記情報を記載
現在事項証明書現在有効な登記情報のみを記載

補助金申請や金融機関への提出には、履歴事項全部証明書が求められることが多いです。

どんな場面で必要になるか

商業登記簿謄本は、以下のような場面で必要になります:

  • 補助金・助成金の申請時
  • 銀行口座の開設や融資申請
  • 取引先との契約締結時
  • 官公庁への届出や申請
  • 税務署や社会保険事務所への手続き

法人としての信用を証明するための重要書類であり、定期的に取得・確認しておくことが望ましいです。


法務局のオンライン申請システムを利用することで、商業登記簿謄本の取得が格段に便利になります。以下に主なメリットを紹介します。

✅ 窓口に行かずに取得できる

従来は法務局の窓口に出向いて申請・受け取りを行う必要がありましたが、オンライン請求なら自宅やオフィスから申請可能。忙しいビジネスパーソンにとって大きな利点です。

✅ 24時間申請可能(※メンテナンス時間を除く)

法務局のオンライン申請サイトは基本的に24時間利用可能。業務時間外や週末でも申請できるため、急ぎの場面にも対応しやすくなっています。

✅ 郵送受け取り・窓口受け取りが選べる

申請時に受け取り方法を選択できるため、郵送での受け取りを希望すれば、法務局に行く必要すらありません。もちろん、窓口での即日受け取りも可能です。


商業登記簿謄本のオンライン請求には、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム(通称:登記ねっと)」を利用します。

🔗 登記ねっととは?

登記ねっとは、登記に関する各種申請をインターネット上で行える公式サービスです。商業登記簿謄本の請求だけでなく、不動産登記や供託手続きなども対応しています。

公式サイト:https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/

🖥 利用に必要な環境

オンライン申請には以下の環境が必要です:

  • パソコン(Windows推奨)
  • 対応ブラウザ(Internet ExplorerまたはEdge)
  • PDF閲覧ソフト(Adobe Acrobat Readerなど)
  • Javaのインストール(一部機能で必要)

※スマートフォンやMacでは一部機能が制限される場合があります。

👤 アカウント登録の有無

登記ねっとでは、利用者識別番号の取得(無料)が推奨されていますが、証明書請求のみであれば「識別番号なし」での申請も可能です。

利用方法特徴
利用者識別番号あり登録情報を保存でき、繰り返し申請に便利
利用者識別番号なし登録不要、1回限りの申請に向いている

ここでは、実際に商業登記簿謄本をオンラインで請求する手順を、ステップごとに解説します。

STEP1:法務局サイトにアクセス

まずは「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスします。トップページから「登記簿謄本等の交付請求」を選択します。

STEP2:請求フォームの入力

請求対象となる法人の情報を入力します:

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 法人番号(任意)

会社名や所在地は登記簿に記載されている通りに正確に入力しましょう。

STEP3:証明書の種類選択

取得したい証明書の種類を選びます。通常は「履歴事項全部証明書」が選ばれますが、用途に応じて「現在事項証明書」なども選択可能です。

STEP4:受け取り方法の選択

以下のいずれかを選択します:

  • 郵送で受け取る(指定住所に送付)
  • 窓口で受け取る(指定した法務局)

郵送の場合は、到着まで数日かかるため余裕を持って申請しましょう。

STEP5:手数料の支払い

証明書の発行には手数料がかかります。支払い方法は以下の通り:

  • 収入印紙(窓口受け取り時に持参)
  • 電子納付(インターネットバンキング等)

電子納付の場合、納付完了後に申請が正式に受理されます。

STEP6:申請完了と受け取りまでの流れ

申請が完了すると、受付番号が発行されます。郵送の場合は数日後に証明書が届き、窓口受け取りの場合は指定日に法務局で受け取ります。


商業登記簿謄本の取得には、証明書の種類に応じた手数料が必要です。以下に代表的な証明書の料金と支払い方法をまとめます。

🧾 証明書の種類ごとの料金

証明書の種類手数料(1通あたり)
履歴事項全部証明書600円
現在事項証明書600円
代表者事項証明書600円
閉鎖事項証明書600円

※料金は2025年8月時点の情報です。変更される可能性があるため、最新情報は法務局公式サイトをご確認ください。

💳 支払い方法

オンライン請求では、以下の方法で手数料を支払うことができます:

  • 電子納付(インターネットバンキング、ATM)
    登記ねっとの画面から納付番号を取得し、対応する金融機関で支払います。
  • 収入印紙(窓口受け取り時)
    窓口で受け取る場合は、法務局で収入印紙を購入して貼付する方法も選べます。

電子納付は自宅から完結できるため、郵送受け取りと併用すると非常に便利です。


証明書の受け取り方法は、申請時に「郵送」または「窓口受け取り」から選択できます。それぞれの特徴を見てみましょう。

✉ 郵送で受け取る場合

  • 申請完了後、通常2〜5営業日以内に指定住所へ届きます。
  • 郵送先は法人の所在地以外でも指定可能。
  • 郵送費用は申請者負担(切手貼付または料金後納)。

※急ぎの場合は、余裕を持って申請するか、窓口受け取りを検討しましょう。

🏢 窓口で受け取る場合

  • 指定した法務局で受け取り可能。
  • 申請完了後、即日または翌営業日に交付されることが多い。
  • 収入印紙を持参する必要があります。

受け取り時には、申請受付番号や本人確認書類が必要になる場合があります。


オンライン申請は便利ですが、入力ミスや手続きの不備によって証明書が発行されないこともあります。以下の点に注意しましょう。

❌ よくあるミス

  • 商号(会社名)の表記ミス(全角・半角、株式会社の位置など)
  • 本店所在地の誤入力(番地や建物名の省略)
  • 証明書の種類の選択ミス(履歴事項と現在事項の混同)
  • メンテナンス時間帯にアクセスして申請できない
  • 電子納付後に納付番号を入力し忘れる

✅ 登記情報の確認方法

申請前に、法務局の「登記情報提供サービス」(有料)を利用して、登記内容を確認することも可能です。これにより、誤入力を防ぐことができます。


証明書の窓口受け取りを希望する場合は、最寄りの法務局を確認しましょう。以下に主要都市の法務局リンクを掲載します。

地域法務局名リンク(公式サイト)
東京東京法務局東京法務局
大阪大阪法務局大阪法務局
名古屋名古屋法務局名古屋法務局
横浜横浜地方法務局横浜地方法務局

※リンク先では、窓口の所在地、受付時間、休業日などが確認できます。


商業登記簿謄本は、法人活動において欠かせない重要書類です。法務局のオンライン申請システムを活用すれば、時間や手間を大幅に削減できます。

  • 登記ねっとで24時間申請可能
  • 郵送受け取りで完全非対面化も可能
  • 手数料は600円から、電子納付でスムーズ
  • 入力ミスに注意し、事前確認を忘れずに

今後の補助金申請や契約手続きに備えて、ぜひオンライン請求を活用してみてください。


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補助金の広場代表畠中

大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。