📘定款の事業目的とは?その役割と重要性
定款とは、会社の基本情報や運営ルールを定めた「会社の憲法」のような存在です。その中でも事業目的は、会社が何を目的として活動するのかを明示する項目であり、定款の「絶対的記載事項」として必ず記載しなければなりません。
事業目的が明確であることは、取引先や金融機関にとっても安心材料となります。逆に、曖昧で分かりづらい事業目的では、信用を得にくくなる可能性があります。
✅事業目的を記載する際の注意点と実務ポイント
会社設立時に作成する定款の中でも、事業目的の記載は特に重要な項目です。なぜなら、事業目的は会社が何を行うのかを明示するものであり、取引先や金融機関からの信頼にも直結するからです。ここでは、事業目的を記載する際に注意すべきポイントを実務的な観点から解説します。
まず押さえておきたいのは、事業目的には「将来行う可能性のある事業」も含めて記載できるという点です。事業目的の変更には登記手続きと費用(登録免許税3万円)がかかるため、将来的に展開する可能性がある事業は、最初から記載しておく方が効率的です。
ただし、事業目的の数が多すぎると会社の実態が不明瞭になり、取引先からの信用を損なう可能性があります。目安としては5〜10個程度に抑えるのが理想です。
また、事業目的を追加・変更・削除する場合は、変更登記が必要です。株式会社の場合は株主総会での特別決議も求められます。手間とコストがかかるため、慎重な判断が求められます。
さらに、事業目的の末尾には「前各号に付帯関連する一切の事業」と記載するのが一般的です。これにより、記載した事業に関連する幅広い活動をカバーできるようになります。
最後に、許認可が必要な業種では、定款に記載すべき事項を漏れなく記載することが必須です。たとえば、旅行業なら「旅行業法に基づく旅行業者代理業」、古物商なら「古物営業法に基づく古物商」など、法律に基づいた表現が求められます。

事業目的作成時の注意事項
私自身の過去の経験から申し上げますと、上記でも記載しましたが、事業目的を定款に記載する際には、特に以下の2点に注意していただきたいと思います。
① 将来的に行う可能性のある事業は、できる限り記載しておくこと
事業目的の変更には、登録免許税として3万円の費用がかかります。さらに、登記手続きや株主総会での決議など、時間と手間も必要になります。そのため、現時点で実施予定がなくても、将来的に展開する可能性のある事業は、あらかじめ定款に盛り込んでおくことを強くおすすめします。
② 記載数が多すぎると、かえって信用を損なう可能性があること
とはいえ、何でもかんでも事業目的に盛り込めば良いというわけではありません。事業内容があまりに多岐にわたると、登記情報を確認した取引先などから「実態が不明瞭な会社」と見なされ、信用を損なうリスクがあります。
そのため、事業目的の数は目安として5〜10個程度に絞り、会社の方向性が明確に伝わるように設計することが重要です。
🎯事業目的を設定する際の3つの基本ポイント
事業目的を記載する際には、以下の3つのポイントを意識することが重要です。
1. 適法性
事業内容が法律に反していないこと。たとえば、詐欺や麻薬の輸入など、公序良俗に反する内容は認められません。また、資格が必要な業種(弁護士、会計士、歯科診療所の経営など)は、有資格者であることが前提です。
2. 営利性
株式会社など営利法人の場合、利益を生む事業である必要があります。非営利活動(ボランティアなど)は主目的にはできませんが、営利目的の事業に付随する形で記載することは可能です。
3. 明確性
第三者が見ても内容が理解できるよう、具体的かつ簡潔に記載することが求められます。事業目的が曖昧だったり、数十個も並んでいると、会社の実態が不透明になり、信用を損なう恐れがあります。
🏭業種別の事業目的例文集
事業目的の書き方は業種によって異なります。以下に代表的な業種ごとの例文を紹介します。
情報通信業
「コンピュータのソフトウェア及びハードウェアの企画、開発、販売並びにそれらに関するコンサルティング業務」
飲食・宿泊業
「飲食店及び喫茶店の経営」「旅館、ホテルその他宿泊施設の運営」
卸売・小売業
「衣料品、雑貨品の企画、製造、販売及び輸出入」
教育・学習支援業
「学習教室、予備校、音楽教室の経営」
サービス業(コンサルティング)
「経営コンサルティング業務」「人材育成のための教育事業」
医療・福祉
「介護保険法に基づく居宅サービス事業」「医療機器類の販売」
不動産業
「不動産の売買、賃貸、管理及びそれらに関するコンサルティング業務」
建設業
「土木工事及び建設工事の設計、施工、請負及び管理」
製造業
「家具類の製造及び販売」「衣類の製造」
地域・社会貢献
「高齢者への食事提供及び食事会の開催」「地域活性化に関する相談」
これらの例文は、定款に記載する際の参考として活用できます。自社の事業内容に合わせて、必要な表現を選びましょう。
🧭事業目的の書き方に迷ったときの対処法
事業目的の書き方に迷った場合は、同業他社の法人登記簿を参考にするのが有効です。法務局で閲覧できる登記簿には、実際に使われている事業目的が記載されており、具体的な表現を確認することができます。
また、許認可が必要な業種や複雑な事業構成の場合は、専門家(司法書士や行政書士)に相談するのも一つの手です。定款の記載ミスは後々の手続きに影響するため、初期段階での正確な設計が重要です。
📌まとめ:事業目的は会社の信頼と将来を左右する
定款の事業目的は、単なる形式的な記載ではなく、会社の信用力や将来の事業展開に大きく関わる重要な要素です。適法性・営利性・明確性を意識し、将来の事業も見据えた設計を行うことで、取引先や金融機関からの信頼を得ることができます。
また、許認可が必要な業種では、法律に基づいた正確な記載が求められるため、慎重な対応が必要です。事業目的の記載は、会社の「顔」とも言える部分。しっかりと準備しておきましょう。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。