はじめに:アルバイト雇用は「雇用主にとって気軽な雇用」ではない
初めてアルバイトを雇用する際、「正社員よりも気軽に雇える」と考える方も少なくありません。しかし、アルバイトも立派な労働者であり、雇用主には法的な責任と義務が生じます。雇用契約や給与、社会保険など、正社員と同様に配慮すべき点が数多く存在します。この記事では、初めてアルバイトを雇用する新人経営者が押さえておくべき基本的なポイントを、正確な情報に基づいて解説します。
🧑💼雇用形態の違いを理解しよう
まずは「アルバイト」と「正社員」の違いを明確にしておきましょう。アルバイトは非正規雇用であり、契約期間が定められた「有期雇用」が一般的です。給与は時給制が中心で、勤務時間も短時間であることが多く、シフト制で働くケースが多く見られます。
一方、正社員は「無期雇用」であり、月給制や年俸制が主流です。業務内容も裁量が大きく、長期的な雇用を前提とした待遇が整っています。雇用形態によって、契約内容や福利厚生、社会保険の加入条件などが異なるため、雇用前にしっかりと確認しておくことが重要です。
💰最低賃金と給与設定の注意点
アルバイトの給与を設定する際には、各都道府県で定められている「地域別最低賃金」を必ず確認しましょう。最低賃金は毎年10月頃に改定されるため、最新の情報を厚生労働省の公式サイトなどでチェックすることが必要です。
また、特定の産業に対して設定される「特定最低賃金」が適用される場合もあります。事業所が両方の対象となる場合は、より高い方の最低賃金が適用されます。最低賃金を下回る給与設定は法律違反となるため、注意が必要です。

当社からのアドバイス:
昨今の政府の方針からアルバイトを雇用する際に注意すべき地域別の最低賃金は毎年UPしていくと考えるべきです。
ですから、アルバイトと最低賃金付近で雇用契約を締結されている方は下記発表にご注意下さい。
最低賃金発表の通常の流れ
1)毎年7月末頃に改定の目安が公表される
2)毎年10月頃改定が実施される
※正確な情報は各都道府県の労働局のHPで確認するようにしましょう。
📄契約書の作成と労働条件の明示
アルバイトを雇用する際には、必ず「労働条件通知書」または「雇用契約書」を作成し、労働者に交付しましょう。契約書には以下のような項目を明記する必要があります。
- 雇用期間(有期契約の場合は契約更新の有無も記載)
- 勤務時間・休憩時間・休日
- 賃金の額・支払い方法・締め日と支払日
- 業務内容
- 社会保険の加入有無
- 異動・転勤の可能性(該当する場合) など
これらの情報を明確にすることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
🛡️社会保険・労災・雇用保険の加入要件
アルバイトであっても、一定の条件を満たす場合には社会保険への加入が義務付けられます。具体的には、正社員の所定労働時間・労働日数の4分の3以上で働く場合や、年収が130万円を超える場合などが該当します。
また、雇用保険は「31日以上の雇用見込み」と「週20時間以上の労働」が条件です。労災保険については、雇用形態に関係なくすべての労働者が対象となり、加入が必須です。加入手続きを怠ると、万が一の事故の際に企業が全額補償を負うことになりかねません。
🌿有給休暇・産休・育休の付与義務
アルバイトにも有給休暇の取得権利があります。雇用開始から6ヶ月以上継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤していれば、所定日数の有給休暇を付与する義務があります。勤続年数に応じて付与日数は増加します。
また、産休・育休についても、一定の条件を満たせばアルバイトでも取得可能です。特に育休は「1年以上継続して雇用されていること」「子が1歳を超えても雇用が継続される見込みがあること」が条件です。制度の詳細は厚生労働省のガイドラインを確認しましょう。
🚫18歳未満の雇用に関する法的制限
18歳未満のアルバイトを雇用する場合には、労働基準法に基づく厳格なルールを守る必要があります。主な制限は以下の通りです。
- 1日の労働時間は8時間以内、週40時間以内
- 午後10時〜翌朝5時の深夜勤務は禁止
- 危険・有害な業務への従事は禁止または制限
高校生の場合は、校則によってアルバイトが禁止されていることもあるため、事前に確認が必要です。
📘パートタイム労働法の改正ポイント
アルバイトやパートタイマーの雇用に関しては、「パートタイム労働法」の遵守が不可欠です。平成27年の改正により、正社員との不合理な待遇差を禁止する規定が強化されました。具体的には、同じ業務内容であれば、賃金・福利厚生・教育訓練などの待遇を正社員と同等にする必要があります。
この法律の目的は、非正規雇用者の納得性と公平性を高めることにあります。雇用主としては、待遇差の根拠を明確にし、説明責任を果たすことが求められます。
🧩まとめ:安心・安全な雇用のために
アルバイトの雇用は、単なる人手補充ではなく、企業の信頼や組織力を左右する重要な要素です。新人経営者にとっては、法令遵守と労働者への誠実な対応が、長期的な経営の安定につながります。この記事で紹介したポイントを参考に、安心・安全な雇用体制を整えていきましょう。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。