企業の最終利益(当期純利益)を理解するには、「特別損益」と「法人税等」の仕組みを押さえることが欠かせません。営業活動とは直接関係のない“イレギュラーな利益や損失”、そして“税金の計算ルール”を知ることで、財務の全体像をつかむことができます。
初心者でもスッと理解できるように、具体的な事例をふんだんに加えて解説します。
1. 特別損益とは?
特別損益とは、企業の通常の営業活動とは関係ない、例外的・一時的に発生する利益・損失のことです。
● なぜ「特別」なのか?
通常の事業で毎年発生するものではないからです。
営業利益や経常利益は“毎年の実力”を測る指標ですが、特別損益は“単年の特殊要因”を示すイメージです。
2. 特別利益の具体例
特別利益に該当する主な例
| 項目 | 内容 | 初心者向けの具体例 |
|---|---|---|
| 固定資産売却益 | 不動産や設備を売ったときの利益 | 10年前に買った土地を売ったら値上がりしていた |
| 投資有価証券売却益 | 保有していた株式・債券などを売って利益が出た | 過去の余剰資金で購入した株を売却して儲かった |
| 補助金収入・保険金収入 | 特定の補助金や災害時の保険金など | 台風で壊れた倉庫の修理費用を保険で補填した |

具体例:こんな利益のことです
ある製造業の会社が、使わなくなった古い工場を売却したところ、購入時より2,000万円高く売れた。
この2,000万円は“本業の儲け”とは無関係なので特別利益として計上される。
3. 特別損失の具体例
特別損失に該当する主な例
| 項目 | 内容 | 初心者向けの具体例 |
|---|---|---|
| 固定資産売却損 | 不動産や機械設備などを売ったら損失になった | 古い機械を売ったが、購入時より値下がっていた |
| 減損損失 | 資産価値が大きく下がった場合 | 大型商業施設を建てたが、人が集まらず価値が半減 |
| 災害損失 | 地震・災害などの被害 | 地震で倉庫の在庫が破損した |
| 事業撤退損 | 赤字部門の閉鎖による損失 | 不採算店舗を閉店して撤退にかかった費用 |

具体例:こんな損失のことです
飲食チェーンが不採算の店舗を3つ閉店することになり、原状回復費用として1,200万円発生した。
通常の営業活動ではなく、“例外的なイベント”のため特別損失になります。
4. 特別損益が利益計算に与える影響
特別損益は、最終利益に下記のように影響します。
● 損益計算書の流れ
営業利益
↓
経常利益(営業外の収益・費用を加減)
↓
特別利益・特別損失を加減
↓
税引前当期純利益
● ポイント
- 特別損益はその年だけ利益が大幅に上下する要因になる
- 企業の“本当の実力”をみるには、特別損益の中身をよく確認する
※通常は 本当の実力=本業の収支 として考える
5. 税引前当期純利益とは?
「特別損益を反映した最終利益(税金を払う前)」のこと。
初心者がつまずきやすいポイント
- 税金を引く前なので最終利益ではない
- この金額に法人税等がかかる
6. 法人税等とは?(基本の構造)
法人税等とは、企業が利益に応じて支払う国税・地方税の総称です。
● 代表的な税目
| 税金の種類 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 法人税 | 企業の所得に対して課税される国税 | 国に払う税金 |
| 法人住民税 | 地域(都道府県・市区町村)に納める税金 | 地元に払う税金 |
| 法人事業税 | 事業を行っていることに対して課される地方税 | 県に払う税金 |
7. 初心者でも理解できる法人税の計算イメージ
企業は「税引前当期純利益」をベースとしつつ、
以下の調整を行って課税所得を算出します。
● ざっくり図解 法人税算出作業の流れ
税引前当期純利益
↓
税務上の調整(必要経費にならないものを足したり引いたり)
↓
課税所得を確定させる
↓
税率をかけて法人税等を計算
● 調整される項目の例
| 調整 | 例 |
|---|---|
| 損金不算入(経費にできないもの) | 交際費の一部、罰金、寄付金の一部 |
| 損金算入(経費に含めるもの) | 減価償却費、貸倒引当金の一部 |
初心者向け「店舗運営における法人税等の計算例」

法人税等の計算においては現場でこのようなことが起こります
Aさんのレストランは、税引前利益が500万円。
しかし税務上は、交際費のうち50万円が経費として認められず、課税所得は550万円に増える。
この550万円をもとに法人税等を計算する。
8. 税引後当期純利益(最終利益)とは?
税金を差し引いたあとに残る利益のこと。
株主への配当や内部留保の源泉となります。
企業にとっての重要性
- 経営の成果を示す最終的な指標
- 企業価値評価にも使われる
- 銀行や投資家が最も注目する数字のひとつ
9. 初心者向け「全体の流れの具体例」
あるカフェチェーンの1年間を例にすると…
- 本業の儲け → 営業利益 2,000万円
- 本業外での損益 → 株の売却損や支払利息などで経常利益 1,850万円
- 古い店舗の閉店損(特別損失 ▲300万円) →税引前当期純利益 1,550万円
- 法人税等として 400万円 →最終利益(当期純利益) 1,150万円
このように、最終利益は
“本業の力”+“イレギュラー要因”−“税金”という流れで決まります。
まとめ
- 特別損益は、単年だけ発生する特殊要因
- 法人税等は、企業の利益に応じて発生する税金
- 最終利益は、
営業利益 → 経常利益 → 特別損益 → 税金 の順に決まる - 企業の“実力”を見るには、特別損益の中身を確認することが大切
補助金・融資コンサルタント育成講座のご案内
士業やコンサルとして中小・零細企業の社長様から要望の多い補助金支援業務について学びたい方はこちら。補助金申請のプロを目指すなら、当社の「補助金・融資コンサルタント育成講座」へ!
実務経験豊富な講師が、補助金申請から融資支援までのノウハウを余すところなく伝授します。



この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。
