法人登記に関する手続きでは、「登記事項証明書を提出してください」と言われることがあります。しかし、実際には登記事項証明書にはいくつかの種類があり、目的に応じて使い分ける必要があります。中でも「履歴事項全部証明書」との違いが分かりづらく、初めての方は戸惑うことも少なくありません。

この記事では、登記事項証明書の種類とそれぞれの特徴、履歴事項全部証明書との違い、そして証明書の取得方法や注意点について、初心者にもわかりやすく解説します。


登記事項証明書とは、法人や不動産などの登記情報を証明するための公的な書類です。会社の設立や変更、所在地、代表者などの情報が法務局に登記されており、その内容を第三者に証明するために発行されます。

登記事項証明書は、契約や融資申請、補助金申請など、さまざまな場面で必要とされる重要な書類です。


登記事項証明書にはいくつかの種類があります。代表的なものは以下の通りです。

まず、「履歴事項全部証明書」は、法人の登記内容のすべての履歴を記載した証明書です。会社の設立から現在までの変更履歴がすべて記録されており、会社の沿革を確認する際に使用されます。

一方、「現在事項証明書」は、現在有効な登記情報のみを記載した証明書です。過去の変更履歴は含まれておらず、現在の会社情報だけを確認したい場合に適しています。

また、「一部事項証明書」は、登記情報のうち特定の項目だけを抜粋して記載する証明書です。例えば、代表者の氏名や本店所在地など、必要な情報だけを取得したい場合に利用されます。

これらの証明書はすべて「登記事項証明書」という総称のもとに分類されており、目的に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。


履歴事項全部証明書は、会社の“履歴書”のような役割を果たします。設立時の情報から、所在地の変更、代表者の交代、資本金の増減など、すべての登記変更が記録されています。

記載される主な項目には、商号(会社名)、本店所在地、会社の目的、資本金の額、役員の氏名と任期、設立年月日などがあります。これらの情報は、融資審査や補助金申請、M&Aなどの場面で、会社の信頼性や沿革を確認するために使用されます。

履歴事項全部証明書は情報量が多いため、提出先によっては不要な情報が含まれてしまうこともあります。そのため、提出先の指示に従って、必要な種類の証明書を選ぶことが大切です。


履歴事項全部証明書と現在事項証明書の違いは、過去の履歴が記載されているかどうかです。履歴事項全部証明書は、会社の過去の変更履歴を含むため、より詳細な情報が必要な場面に適しています。

一方、現在事項証明書は、現在の登記情報のみを記載しているため、取引先の確認や簡易な提出書類として利用されることが多いです。

一部事項証明書は、特定の項目だけを抜粋して記載するため、必要最小限の情報で済む場合に便利です。例えば、代表者の氏名だけを確認したい場合などに使用されます。

証明書の種類を誤って提出すると、再提出を求められることもあるため、事前に提出先に確認することが重要です。


登記事項証明書は、法務局の窓口またはオンラインで取得することができます。オンラインの場合は「登記情報提供サービス」を利用することで、PDF形式での取得が可能です。

取得手数料は、窓口での交付が600円、オンラインPDFは480円(2025年現在)となっています。提出先によっては、紙の原本が必要な場合もあるため、PDFでの提出が認められるかどうかを事前に確認しておきましょう。

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証明書の有効期限について
証明書には、提出先の行政機関や団体によって有効期限が定められている場合があります。一般的には「発行日から3か月以内」の証明書の提出を求められることが多く、これが現在の主流となっています。
そのため、有効期限を過ぎた証明書を提出してしまうと、再取得が必要となる場合があります。こうしたトラブルを避けるためにも、提出前に証明書の発行日を必ず確認するようにしましょう。
なお、「発行日から3か月以内」といった期限は、証明書を受け取る側が独自に定めた社内ルールであることがほとんどです。したがって、証明書を提出する際は、必ず事前に提出先のルールを確認することが重要です。


「登記事項証明書」と言われた場合、どの種類を指しているかは文脈によって異なります。履歴事項全部証明書を求められているのか、現在事項証明書でよいのか、提出先に確認することが確実です。

また、履歴事項全部証明書は情報量が多いため、個人情報保護の観点から提出先によっては不要な場合もあります。必要以上の情報を提出しないよう、指示に従って適切な種類を選びましょう。


登記事項証明書は、法人の存在や内容を証明するための重要な書類です。履歴事項全部証明書はその中でも特に詳細な情報を含むため、法務や金融の場面で重宝されます。

証明書の種類を正しく理解し、目的に応じて適切なものを選ぶことで、手続きがスムーズに進み、余計な手間や再提出を防ぐことができます。

補助金や融資申請においても、登記情報の正確な提出は信頼性の証となります。これから申請を検討されている方は、証明書の種類と取得方法をしっかり把握しておきましょう。

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補助金の広場代表畠中

大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。