補助金の広場

企業が継続的に利益を生み出すためには、製造にかかるコスト(売上原価)だけでなく、販売・運営にかかるコスト(販管費)を正確に把握することが不可欠です。

販管費は企業の財務体質に大きな影響を与えるため、経営の基本を理解するうえで必ず押さえておきたい項目の一つです。

本記事では、主に企業支援業務初心者の方に向けてわかりやすく、実務でそのまま活用できるレベルまで深掘りして解説します。

どうぞ最後までお付き合いください。

販管費(はんかんひ)=販売費および一般管理費の総称。

企業が商品・サービスを販売し、会社を運営するために必要な費用です。

ここが重要:

🔍 販管費とは「売上をつくるための間接的な費用」

売上原価のように「商品の製造に直接必要な費用」ではありません。
しかし、会社を動かすためには必ず必要になるコストです。

例えると…

  • 売上原価:料理を作るための材料費・調理費
  • 販管費:店を運営するための家賃・広告費・店員の接客人件費

といったイメージです。

販管費は大きく次の2種類に分けられます。

  1. 販売費(販売のための費用)
  2. 一般管理費(会社を動かすための費用)

初めての人でも理解しやすいように具体例つきで深掘りします。

(1)販売費:商品を売るための費用

販売活動に直接関係する費用です。

販売費の項目具体例(実務でよくあるケース)
広告宣伝費Google 広告、Meta 広告、チラシ制作費、動画広告費
販売促進費キャンペーン費、サンプル配布、クーポン、ポイント還元
営業人件費営業社員の給与、インセンティブ、社会保険料
販売手数料楽天・Amazonの販売手数料、クレジットカード手数料
運搬費・発送費ネットショップの送料、配送会社への支払い
旅費交通費営業担当者の出張費、交通費
接待交際費顧客との会食、営業上の接待費

💡ポイント:

販売費は、売上の伸びに比例して増えることが多い費用(変動費的な性質がある)。

(2)一般管理費:会社を運営するための費用

企業を運営する「本社管理業務」に関する費用です。

一般管理費の項目具体例(実務のイメージ)
管理部門の人件費経理・総務・人事・管理職・バックオフィスの給与
役員報酬社長・取締役への報酬
オフィス賃料本社オフィス家賃、駐車場代
水道光熱費電気代、ガス代、水道代
通信費インターネット回線費、携帯電話代
備品費パソコン、プリンター、サーバー、文房具
消耗品費コピー用紙、トナー、名刺
減価償却費オフィス設備、車両、什器備品の償却
福利厚生費健康診断、慶弔見舞金、社内イベント
法務・税務関連費顧問税理士費用、弁護士費用、社会保険労務士費用

💡ポイント:

一般管理費は、売上にあまり比例しない固定費的な性質が強い

3. 販管費と売上原価の違いを分かりやすく比較

初心者が最も混乱する部分なので、違いを明確に図表で整理します。

項目含まれるコスト具体例性質
売上原価商品を「作る」ための費用材料費・製造人件費変動費が多い
販売費商品を「売る」ための費用広告費・営業人件費売上連動が多い
一般管理費会社を「運営する」費用本社家賃・管理部門給料固定費が多い

4. 販管費が利益に与える影響(利益構造を理解しよう)

利益計算の流れは以下のとおりです。

売上高- 売上原価= 売上総利益(粗利)

売上総利益- 販管費= 営業利益

つまり、

🔥 販管費は「営業利益」を直接減らす“重たいコスト”

販管費を管理しない企業は、売上が伸びても利益が出ない体質になりがちです。

例:売上は増えているのに利益は減るケース

  • 広告費が増えすぎている
  • 営業マンの売上が伸びず人件費だけ重い
  • 本社の家賃が高い
  • サブスク契約が増えすぎている(SaaS地獄)

利益改善の第一歩は、販管費の見直しから始まると言われる理由がここにあります。

5. よく使う指標:販管費率(販管費 ÷ 売上高)

販管費率(%)= 販管費 ÷ 売上高 × 100

例えば… 売上:1億円 販管費:3000万円の場合 販管費率は30%となります。

業種ごとの目安

業種一般的な販管費率の目安
製造業10〜20%
卸売業10〜15%
小売業20〜35%
サービス業30〜50%

※実務では業界平均と比較して判断するのが基本。

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銀行融資や補助金申請時の注意点
銀行や各種申請書の審査担当者は、業界ごとの豊富なデータを保有しています。そのため、申請者の業種や事業規模を見れば、理想的な販管費などの経営指標を把握しています。
したがって、事業計画書などに現実とかけ離れた理想的な数値を記載すると、かえって信用を損なう可能性があります。
自社の業種や規模に見合った妥当な経営数値が分からない場合は、経営コンサルタントや顧問税理士など、財務の専門家に相談することをおすすめします。

6. 販管費改善で効果が出るポイント(実務向け)

■ 改善しやすい項目

  • 広告費(CPAの最適化)
  • 出張旅費(オンライン化)
  • サブスク費用(不要なSaaSの洗い出し)
  • 事務所移転による家賃削減
  • 通信費のプラン見直し

■ 改善が難しい項目

  • 人件費(ただし適正化は重要)
  • 役員報酬
  • 退職給付費用

「削減」よりも「生産性向上」による改善のほうが長期的メリットが大きいケースも多いです。

  • 販管費=販売活動+企業運営に必要な費用
  • 販売費と一般管理費に分類される
  • 売上原価とは違い、「売る」「運営する」ための費用
  • 営業利益を直接圧迫するため、改善効果が非常に大きい

企業の財務分析や経営改善に取り組む際、
販管費は最重要項目の一つと言っても過言ではありません。

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補助金の広場代表畠中

大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。