🧭はじめに:起業スタイルを選ぶ前に知っておきたいこと
独立して事業を始める際、「個人事業主として始めるべきか?」「法人として会社を設立すべきか?」と悩む方は少なくありません。どちらにもメリット・デメリットがあり、事業の規模や将来の展望によって最適な選択は異なります。
この記事では、個人事業主と法人設立の違いを整理し、それぞれの特徴を正確に比較することで、あなたにとって最適な起業スタイルを見つけるヒントを提供します。
📝開業・設立手続きの違い
個人事業主としての開業は非常にシンプルです。税務署に「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出するだけで、事業を始めることができます。登記や定款の作成などの煩雑な手続きは不要です。
一方、法人設立には法務局での登記申請、定款の作成、公証人による認証、印鑑証明書の取得など、複数の手続きが必要です。開業までに時間と労力がかかるため、手続きの簡便さでは個人事業主に軍配が上がります。
💰設立費用と資本金の違い
個人事業主は開業にあたって費用がほとんどかかりません。登記も不要なため、初期費用を抑えてスタートできます。
一方、法人設立には登録免許税や定款認証費用などが発生し、株式会社の場合は最低でも約22.2万円程度の費用が必要です。また、法人には資本金の設定が求められますが、現在では1円から設立可能です。ただし、資本金が少なすぎると信用面で不利になることもあるため、慎重な判断が必要です。
🏦信用度・融資の通りやすさ
法人は社会的な信用度が高く、取引先や金融機関からの評価も安定しています。ウェブサイトの運営元が法人であることが信頼につながるケースも多く、融資の審査でも法人の方が有利です。
一方、個人事業主はフリーランスとしての柔軟性があるものの、法人と比べると信用面で劣る場合があります。特にプロパー融資などでは、財務の透明性が求められるため、法人の方が通りやすい傾向があります。
👥人材採用のしやすさ
優秀な人材を採用したい場合、法人の方が有利です。社会保険の整備や就業規則の明確化など、働く環境が整っている法人は求職者にとって魅力的です。
個人事業主の場合、保険制度や雇用環境が整っていないことが多く、人材確保に苦労するケースもあります。事業を拡大する予定がある場合は、法人化を検討する価値があります。
📊税金と経費の扱いの違い
税制面では、法人の方が経費として認められる範囲が広く、節税効果が期待できます。生命保険料や旅費、家族への給与なども経費計上が可能で、年間所得が600〜700万円を超える場合は、法人化した方が税率が低くなるケースもあります。
ただし、交際費に関しては法人には一定の制限があるため、交際費が多い業種ではシミュレーションが必要です。個人事業主は交際費に上限がないため、業種によっては有利になることもあります。
🧾経理・人事管理の工数
個人事業主は簡易申告が可能で、保険などの手続きも個人単位で済むため、管理の手間が少なくて済みます。
一方、法人は複式簿記による決算書の作成が必要で、税務申告も複雑になります。また、健康保険や厚生年金への加入が義務付けられているため、人事管理の工数も増加します。経理や人事の負担を軽減するには、専門家のサポートが不可欠です。

当社アドバイス
「あなたに合った起業スタイルを選ぶには」
ここまでご説明した通り、個人事業主と法人には、それぞれにメリット・デメリットが存在します。事業の規模、将来の展望、資金状況、人材採用の方針などを踏まえたうえで、最適なスタイルを選ぶことが重要です。
「まずは小さく始めたい」「信用を得て事業を拡大したい」など、目的によって選択肢は変わります。
ちなみに、私は個人事業主として10年以上事業実施後、大口取引先との関係で必要性を感じ会社形態を法人へ変更しました(これを、法人成りといいます)。
個人事業か法人か、決断が難しい方は一度専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。