1. 行政書士を含む士業の「独占業務」とは?他士業との違いを理解しよう
  2. 開業初期に注力すべき!行政書士に人気の業務ベスト5
    2-1. 相続・遺言業務:高齢化社会でニーズ拡大中
    2-2. 創業支援・法人設立:起業ブームに乗るチャンス
    2-3. 権利義務関連業務:離婚協議書・内容証明で生活に密着
    2-4. 建設業許可申請:安定収入が見込める業界を支援
    2-5. 外国人在留資格取得支援:国際化社会で需要増加
  3. 補助金・融資支援という新たな柱:法人向け財務支援の可能性
  4. まとめ:行政書士として成功するための業務選定と戦略

行宇正書士業務紹介

この記事は、以下のような方々に向けて書かれています:

◆他士業との違いや、行政書士としての可能性を再確認したい方

◆これから行政書士として開業を予定している方

◆開業してから3年以内で、どの業務に注力すべきか悩んでいる方

◆自分の強みを活かしながら、安定した収益を確保したいと考えている方


行政書士として開業を目指す、あるいは開業して間もない方にとって、まず押さえておきたいのが「士業ごとの独占業務の違い」です。
これは、どの業務を自分が扱えるのか、また他士業とどう差別化していくかを考える上での土台となります。

🔍 独占業務とは?

「独占業務」とは、法律によってその士業の有資格者だけが行える業務のことです。
無資格者が行えば、違法行為(非弁行為など)として罰せられる可能性があります。
たとえば、医師免許を持たない人が他人を手術するといった行為が違法行為であることは理解しやすいのではないでしょうか。
以下に代表的な士業とその独占業務を整理してみましょう。

士業名独占業務の例備考
弁護士訴訟代理、法律相談、契約書作成など法律業務全般を網羅。最も広範な権限を持つ士業。
税理士税務申告、税務相談、税務代理など税務署への申告代理は税理士のみ可能。
司法書士不動産登記、商業登記、簡裁訴訟代理など登記業務は司法書士の独占。簡易裁判所での代理も可能(一定条件下)。
社会保険労務士労働・社会保険手続、就業規則作成など労働基準監督署や年金事務所への手続き代理が可能。
行政書士官公署への許認可申請書類の作成・提出代理、権利義務に関する書類作成業務、事実証明に関する書類の作成など許認可関連の書類作成・提出が中心。業務範囲は広いが、他士業との境界に注意。
中小企業診断士経営コンサルティング、事業計画書作成など独占業務がない。企業へのコンサルティングや企業経営のプロとして講師業に専念する方などが活躍。

⚖️ 行政書士の立ち位置と強み

行政書士の独占業務や独占業務ではないが他の行政書士業務と相性の良い手続きや書類作成業務には以下のようなものがあります:

▼官公署に提出する書類の作成業務
・建設業許可申請
・宅地建物取引業免許許可申請
・農地転用許可申請
・飲食店営業許可申請
・酒類販売業免許申請
・道路使用許可申請
・旅館営業許可申請
・個人タクシー免許申請
・風俗営業許可申請書
・旅行業登録申請書
・NPO法人設立認証申請
・医療法人設立許可申請
・宗教法人設立認証申請
・入札資格審査申請書
・在留資格申請書
・自動車登録申請書
・車庫証明書 など

▼権利義務に関する書類の作成業務
・遺産分割協議書
・遺言書
・相続分譲渡証書
・特別受益証明書
・各種契約書(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇傭、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)
・念書
・示談書
・協議書
・内容証明
・告訴状
・告発状
・嘆願書
・請願書
・行政不服申立書
※特定行政書士に限る
・上申書
・陳情書
・始末書
・定款 など

▼事実証明に関する書類の作成業務
※会社に関する書類
・各種議事録(株主総会議事録、取締役会議事録等
※会計に関する書類
・会計帳簿
・貸借対照表
・損益計算書等の財務諸表
・決算書類
※調査に関する書類
・実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)
・交通事故調査書
・社員履歴調書
・会社業歴書
・交通事故調査報告書
※その他
・資格証明
・自動車登録事項証明書 など

行政書士の強みは、業務範囲が非常に広く、かつ生活やビジネスに密着した手続きが多い点です。
ただし、他士業との業務境界が曖昧な部分もあるため、業務を行う際には「どこまでが行政書士の範囲か」を常に意識する必要があります。

💡 他士業との連携がカギ

行政書士は、他士業と連携することで業務の幅を広げることができます。

たとえば:

  • 税理士と連携して創業支援や補助金申請を行う
  • 社労士と連携して建設業許可後の労務管理をサポート
  • 弁護士と連携して離婚協議書や遺言書の法的チェックを依頼

このように、行政書士は「士業のハブ」としての役割も果たせる存在になることが出来る強みがあります。


行政書士として開業したばかりの方にとって、「どの業務に注力すべきか」は最も大きな悩みの一つです。
ここでは、実際に多くの行政書士が取り組み、安定した収益や顧客基盤を築いている人気業務を5つ厳選してご紹介します。

2-1. 相続・遺言業務:高齢化社会でニーズ拡大中 🧓📜

✅ 業務の概要

相続・遺言業務は、行政書士の中でも特に人気が高く、安定した需要が見込める分野です。
主な業務内容は以下の通りです:

  • 遺言書の作成支援(自筆証書・公正証書)
  • 相続人調査(戸籍収集)
  • 相続関係説明図の作成
  • 財産目録の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続手続きのサポート(預貯金・不動産・自動車など)

📈 なぜ人気なのか?

  • 高齢化社会の進行により、相続に関する相談は年々増加傾向
  • 弁護士や司法書士に比べて相談のハードルが低く、地域密着型で信頼を得やすい
  • 相続は一度きりの手続きではなく、家族ぐるみでの長期的な関係構築が可能
  • 遺言書作成から相続手続きまで一貫してサポートできる

💡 実務のポイントと注意点

  • 戸籍の読み解きや相続関係図の作成には正確さと根気が求められます
  • 相続人間のトラブルがある場合は、弁護士との連携が不可欠
  • 不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の業務なので、業務範囲を明確にすること

🛠️ 開業初期に取り組むコツ

  • 地元の葬儀社や仏具店、税理士、司法書士と連携し、相続相談の窓口として紹介を受ける
  • 市民講座やセミナーで「相続の基礎知識」などをテーマに地域住民との接点を増やす
  • ホームページやチラシで「相続・遺言サポート専門」を打ち出し、専門性をアピール

2-2. 創業支援・法人設立:起業ブームに乗るチャンス 🚀🏢

✅ 業務の概要

創業支援・法人設立業務は、これから事業を始めようとする個人や法人に対して、法的・実務的なサポートを行う分野です。行政書士が関与できる主な業務は以下の通りです:

  • 株式会社・合同会社などの設立書類の作成(定款、議事録など)
  • 電子定款の作成・認証手続き
  • 許認可が必要な業種の調査と申請支援(例:飲食業、建設業など)
  • 事業計画書の作成支援
  • 補助金・融資申請支援(詳細は後述)

📈 なぜ人気なのか?

  • 起業支援は常に一定のニーズがあるため、安定した業務獲得が可能
  • 許認可業務や補助金申請など、継続的な支援につながりやすい
  • 税理士や社労士など他士業との連携でワンストップサービスを提供できる
  • 電子定款認証により、印紙代4万円の節約が可能という強みをアピールできる

💡 実務のポイントと注意点

  • 定款の内容は会社の将来を左右するため、業種や目的に応じた柔軟な設計が必要
  • 許認可が必要な業種かどうかを事前にしっかりヒアリングすることが重要
  • 設立後の税務・労務手続きは他士業の領域となるため、信頼できる専門家とのネットワーク構築が鍵

🛠️ 開業初期に取り組むコツ

  • 地元の商工会議所や創業支援センターと連携し、創業セミナーや相談会に参加
  • ホームページで「法人設立サポートパック」などの明確な料金プランを提示
  • 「電子定款対応」「許認可込み」など、他士業との差別化ポイントを明示

2-3. 権利義務関連業務:生活に密着した法的サポート ✍️💔

✅ 業務の概要

「権利義務に関する書類の作成」は、行政書士法第1条の2に明記された行政書士の中心的な業務の一つです。
その中でも特に需要が高いのが、以下のような書類の作成です:

  • 離婚協議書
  • 内容証明郵便
  • 金銭消費貸借契約書
  • 債権譲渡契約書
  • 示談書・合意書
  • 貸金返還請求書 など

これらはすべて、当事者間の権利や義務を明確にするための重要な文書であり、法的トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

📈 なぜ人気なのか?

  • 個人の生活に密着したニーズが多く、地域密着型の行政書士にとって取り組みやすい
  • 弁護士に依頼するほどではないが、自分で書くには不安という層の需要が多い
  • 内容証明などは比較的短期間で完結する業務で、報酬単価も安定している
  • 離婚協議書などは公正証書化のサポートにもつながり、継続的な支援が可能

💡 実務のポイントと注意点

  • 離婚協議書や示談書は、感情的な背景を含むことが多く、丁寧なヒアリングが不可欠
  • 内容証明は文面の表現に注意が必要。誤解を招く表現や法的誤認を避ける
  • 弁護士法に抵触しないよう、「法律相談」ではなく「文書作成支援」に徹することが重要
  • 公正証書化を希望される場合は、公証人との連携も視野に入れる

🛠️ 開業初期に取り組むコツ

  • 「離婚協議書作成サポート」「内容証明作成代行」など、具体的なサービス名で集客
  • 地元の女性支援センターやNPO法人、法律相談窓口と連携し、相談者の紹介を受ける
  • ホームページやブログで「離婚時に必要な書類とは?」「内容証明の書き方」など、実用的な情報発信を行う

2-4. 建設業支援・建設業許可申請支援:安定収入が見込める業界支援 🏗️📄

✅ 業務の概要

建設業界は行政書士にとって非常に重要な顧客層の一つです。建設業を営むには、一定の条件を満たした上で「建設業許可」を取得する必要があり、その申請手続きは煩雑かつ専門性が高いため、行政書士の出番となります。

主な業務内容は以下の通りです:

◆建設業許可申請(新規・更新・業種追加・変更届など)

◆経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者の要件確認

◆決算変更届、事業年度終了報告書の作成

◆産業廃棄物収集運搬業許可などの関連許認可

◆入札参加資格申請(経審・指名願い)

📈 なぜ人気なのか?

  • 建設業許可は定期的な更新や変更が必要なため、継続的な収入が見込める
  • 許可取得後も決算変更届や経審などの定期業務が発生
  • 法人顧客との関係が築ければ、他の許認可や補助金申請にもつながる
  • 地方では特に、行政書士が建設業界の“顧問”的存在になることも多い

💡 実務のポイントと注意点

  • 許可要件(経管・専技・財産的基礎など)の確認は非常に重要かつ複雑
  • 決算書や登記簿謄本など、他士業(税理士・司法書士)との連携が必要
  • 虚偽申請や形式的な書類作成は行政処分のリスクがあるため厳禁
  • 地方自治体によって運用の解釈に差があるため、事前確認が必須

🛠️ 開業初期に取り組むコツ

  • 地元の建設業協会や工務店、設備業者とのネットワーク構築が鍵
  • 「建設業許可取得マニュアル」などの無料資料を用意し、見込み客を獲得
  • ホームページで「建設業許可サポート専門」を打ち出し、専門性を明確に
  • 決算変更届や経審などの年間サポート契約を提案し、安定収入を確保

2-5. 外国人在留資格取得支援業務:国際化社会で需要増加中 🌏🛂

✅ 業務の概要

外国人が日本に滞在・就労・永住するためには、出入国在留管理庁(入管)への申請が必要です。行政書士は、これらの在留資格に関する申請書類の作成および提出取次を行うことができます。

主な業務内容は以下の通りです:

  • 在留資格認定証明書交付申請
  • 在留資格変更許可申請
  • 在留期間更新許可申請
  • 永住許可申請
  • 帰化申請(※書類作成のみ)
  • 配偶者ビザ、家族滞在ビザ、就労ビザなどの取得支援
  • 技能実習・特定技能・高度専門職などの制度対応

📈 なぜ人気なのか?

◆外国人労働者の受け入れ拡大により、企業からのニーズが急増

◆技能実習や特定技能など、制度の複雑化により専門家の支援が不可欠

◆個人顧客(配偶者ビザや永住申請など)からの直接依頼も多い

◆入管業務は専門性が高く、差別化しやすい分野

💡 実務のポイントと注意点

  • 入管業務を行うには、「申請取次行政書士」の資格取得が必要
  • 法改正や制度変更が頻繁にあるため、常に最新情報をキャッチアップする姿勢が必要
  • 虚偽申請や不正な書類作成は厳しい処分対象となるため、慎重な対応が求められる
  • 外国人本人だけでなく、雇用主や家族との調整力も重要

🛠️ 開業初期に取り組むコツ

  • 外国人を多く雇用する建設業・介護業・飲食業などの企業と接点を持つ
  • 地元の日本語学校や技能実習監理団体と連携し、相談窓口としての信頼を得る
  • ホームページを多言語対応(英語・中国語・ベトナム語など)にすることで、直接の問い合わせを増やす
  • 「ビザ申請専門」「永住・帰化サポート」など、専門性を明確に打ち出す

✅ 業務の概要

行政書士の業務は「許認可」や「権利義務」にとどまりません。近年、特に注目されているのが「補助金・融資申請支援」といった、法人向けの財務支援業務です。

行政書士が関与できる主な支援内容は以下の通りです:

◆中小企業支援機関との連携による経営支援

◆各種補助金(例:ものづくり補助金、新事業進出補助金など)の申請書類作成支援

◆事業計画書の作成支援

◆銀行融資申請時の必要書類作成支援

◆経営力向上計画、先端設備等導入計画などの認定申請

📈 なぜ注目されているのか?

  • 補助金制度は国・自治体ともに拡充傾向にあり、企業側のニーズが高まっている
  • 補助金申請には事業計画書や収支計画などの専門的な書類作成が必要
  • 税理士や社会保険労務士と連携することで、行政書士の業務領域を広げられる
  • 成功報酬型の契約も可能で、高単価かつ成果に応じた報酬が得られる

💡 実務のポイントと注意点

  • 補助金の公募要領は非常に細かく、読み込みと制度理解が不可欠
  • 採択率を高めるには、事業の独自性・実現可能性・社会的意義などを明確に表現する必要がある
  • 税務・財務の知識が求められる場面も多いため、税理士や診断士との連携が重要
  • 補助金は後払い方式が多く、資金繰りや実行体制の確認も必要

🛠️ 開業初期に取り組むコツ

  • 「補助金申請サポート」「融資書類作成支援」などの明確なサービスメニューを用意
  • 地元の商工会議所、金融機関、認定支援機関と連携し、相談者の紹介を受ける
  • 「補助金に強い行政書士」としての専門性をホームページやSNSで発信
  • 補助金情報を定期的に発信するメールマガジンやLINE公式アカウントを活用し、見込み客との接点を維持

補助金・融資支援は、行政書士が「経営支援のパートナー」として企業と長期的な関係を築くための強力な武器になります。特に「補助金の入口支援+許認可の実行支援」という組み合わせは、行政書士ならではの強力な武器となります。


行政書士として開業し、安定した収益と信頼を築くためには、単に「できる業務」をこなすだけでは不十分です。重要なのは、自分の強みや地域性、市場ニーズを踏まえた「業務選定」と「戦略的な展開」です。
ここでは、これまで紹介した人気業務を踏まえ、成功するための考え方と実践的なアドバイスをまとめます。

🎯 自分の「専門分野」を明確にする

行政書士の業務範囲は広いため、開業初期にすべてを網羅しようとすると、かえって中途半端になりがちです。
まずは以下のような観点から、自分が注力すべき分野を絞りましょう:

  • 自分の興味・経験が活かせる分野(例:建設業出身 → 建設業許可)
  • 地域のニーズが高い分野(例:高齢化地域 → 相続・遺言)
  • 他士業との連携がしやすい分野(例:創業支援 → 税理士・社労士と連携)

「〇〇専門行政書士」として打ち出すことで、検索エンジン対策(SEO)にも有利になります。

🤝 他士業・地域ネットワークとの連携を強化する

行政書士は単独で完結する業務が少なく、他士業との連携が極めて重要です。
特に以下のような連携は、業務の幅を広げるだけでなく、顧客満足度の向上にもつながります:

  • 税理士:創業支援、補助金申請、相続税対策
  • 司法書士:不動産登記、会社設立登記
  • 弁護士:離婚・相続トラブル、契約書の法的チェック
  • 社労士:建設業許可後の労務管理、就業規則作成

また、商工会議所、金融機関、NPO法人、外国人支援団体など、地域の支援機関との関係構築も非常に有効です。

📣 情報発信とブランディングを怠らない

どれだけ優れたスキルを持っていても、知られなければ依頼は来ません。開業初期こそ、積極的な情報発信とブランディングが必要です。

◆Googleビジネスプロフィールや口コミサイトで評価を集める

◆ホームページやブログで「専門性」と「人柄」を伝える

◆SNS(X、Instagram、YouTubeなど)で実務の裏側や法改正情報を発信

◆無料相談会やセミナーを開催し、地域住民との接点を増やす

【ポイント】「この分野ならこの人」と思ってもらえるような、専門性と信頼感のある発信を心がけましょう。


行政書士の仕事は、単なる書類作成ではありません。
依頼者の人生や事業に深く関わり、安心と信頼を提供する「人間力」が問われる仕事です。

開業初期は不安も多いかと思いますが、焦らず、着実に、そして誠実に業務に取り組むことで、必ず道は開けます。

あなたの専門性と情熱が、誰かの人生を支える力になります。
ぜひ、自分に合った業務を見つけ、行政書士としてのキャリアを築いていってください。


補助金の広場代表畠中

大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。

補助金実務を学ぶ