■この記事を読んでほしい方

  • 中小企業のM&A仲介や支援ビジネスへの参入を考えている士業・経営コンサルタントの方
  • これからM&A市場の調査を始めようとしている独立系専門家
  • 中小企業の経営者からM&A相談を受ける立場にある専門家
  • これからM&Aを利用しようとしているオーナー社長

■この記事を読むと分かること

  • 中小企業M&Aの相場の全体像と算出方法
  • 業種別・売上別の相場感の具体例
  • 買い手企業が重視するポイントと評価の考え方
  • M&A支援ビジネスにおける価格目安の活用方法

  1. 中小企業M&Aの相場とは?基本的な考え方
  2. 業種別M&A相場一覧
  3. M&A相場の目安
  4. M&A価格はどうやって決まるのか?評価手法の基礎
  5. 士業・コンサルがM&A相場を理解すべき理由
  6. M&A価格に影響を与える7つの要素
  7. 売り手・買い手が重視するポイントの違い
  8. まとめ:相場の知識を支援業務にどう活かすか

中小企業M&Aにおける「相場」とは、売却される企業の価値(企業価値や事業価値)を一定の基準に基づいて金額化したものです。特にスモールM&A(小規模M&A)では、明確な市場価格が存在しないことが多く、買収希望企業の視点や地域性、将来性などによって大きく変動します。

一般的には「時価純資産+営業権(のれん代)」という形で算出されることが多く、簡易的には「EBITDA×倍率(マルチプル)」という方法も用いられます。
※EBITDA(イービットディーエー) Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの頭文字を取った略称で、税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。


業種ごとに収益性や資産構成が異なるため、相場にも違いがあります。
※中堅・中小企業M&Aの場合

業種EBITDA倍率の目安備考
業界全体約5~6倍個別案件で変動大
飲食業約6倍立地やブランドが重視される
一般機械・電子部品製造等約5倍ストック収益がある場合に高評価
金属・プラスチック関連約5~6倍
建設業約4倍大手との取引実績や人材の確保がカギ

最終的な価格は売手側と買手側の交渉結果によって決定されます。その為、M&Aの価格に明確な相場というものはありません。
他方、中小企業のM&A・事業承継を中心に「時価純資産額+営業利益2~5年分」を価格交渉スタートの目安としているケースが多くあるのは事実です。


M&A価格を決定する際には、次のような評価手法が使われます:

  • 時価純資産法:保有資産と負債の差額をもとに評価
  • DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法):将来の収益を現在価値に割り引いて評価
  • 市場類似会社法:同業他社との比較で算定
  • EBITDA倍率法:営業利益に倍率をかけて評価 など

実務では複数手法を組み合わせ、買い手・売り手の合意点を探ります。


M&A支援業務では、クライアントに「どのくらいで売れるのか」「買うときの妥当価格は?」という相談を受ける場面が頻繁にあります。その際、相場の知識がなければ信用を失いかねません。

相場観を持つことで、適正価格の提案や交渉支援がスムーズに行え、差別化されたサービス提供が可能になります。


  1. 財務内容(黒字か赤字か)
  2. 将来の収益性や成長性
  3. 経営者依存度の高さ
  4. 顧客リストや契約内容
  5. ブランド・立地・ノウハウなどの無形資産
  6. 離職率や従業員の質
  7. 許認可・業界規制への対応力

  • 売り手:なるべく高く売りたい、従業員の雇用維持、事業の継続性
  • 買い手:投資回収期間、リスクの少なさ、相乗効果、専門人材の有無

中小企業M&Aにおいて、相場感の把握は支援者にとって必須のスキルです。定量的な知識を持ち、現場での価格交渉や提案に説得力をもたせることが、信頼獲得やビジネスチャンスの拡大につながります。

今後M&Aの専門家を目指すのであれば、さらに増えるであろう中小企業の事業承継ニーズに応えるためにも、日々の実務や情報収集の中で相場感を磨いていきましょう。

補助金の広場代表畠中

大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。