IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などを対象に、デジタル化や業務効率化を目的としたITツールの導入を支援する国の補助制度です。正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といい、経済産業省の補助により、導入費用の一部が支援されます。
2025年版では、最低賃金引上げへの対応や、インボイス制度・サイバーセキュリティ対策など、現代的な経営課題への支援内容が強化されています。
*本記事は2025年6月中小企業庁より公開された資料により作成
【参考】2024年度の採択状況

IT導入補助金初心者の方に向けて、2024年度においてどのような業種の方がこの補助金を利用されたか、また、1件あたりの補助額や採択された事業者の従業員数などをこちらでご紹介致します。
まずはご自身の会社も対象となるというイメージをお持ちいただければよいかと思います。
(出典元:IT導入補助金2025の概要:令和7年6月中小企業庁)
業種別の採択件数
業種 | 採択数 | 割合 |
---|---|---|
建設業 | 10613 | 21.2% |
卸売業、小売業 | 8873 | 17.7% |
宿泊業、飲食サービス業 | 4986 | 9.9% |
学術研究、専門、技術サービス業 | 4525 | 9.0% |
サービス業(他に分類されないもの) | 4064 | 8.1% |
製造業 | 3969 | 7.9% |
医療、福祉 | 3941 | 7.9% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 2689 | 5.4% |
不動産業、物品賃貸業 | 2646 | 5.3% |
情報通信業 | 1446 | 2.9% |
運輸業、郵便業 | 1019 | 2.0% |
その他(農業、金融業など) | 1400 | 2.8% |
補助金交付額ごとの採択件数
採択された補助額 | 採択数 |
---|---|
100万円未満 | 18417 |
100万円以上150万円未満 | 10979 |
150万円以上300万円未満 | 7959 |
300万円以上450万円未満 | 12711 |
450万円 | 105 |
採択された事業者の従業員数との採択件数
従業員数 | 採択数 |
---|---|
5名未満 | 20432 |
5から50名未満 | 24520 |
50から100名未満 | 2942 |
100名以上 | 2277 |

当社からのアドバイス
各種データをご覧いただくと、さまざまな業界で「IT導入補助金2024」が幅広く活用されていることがご理解いただけます。中でも、建設業(最多件数)、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉といった業界では、ITを活用した業務改善に積極的に取り組む姿勢が顕著に見られます。
また、従業員規模別の採択データからは、中小企業による利用が大半を占めており、従業員5〜50名の企業が最も多いことから、この補助金が中小企業にとって非常に重要な支援策であることが分かります。
さらに、補助額の傾向を見ると、100万円未満の申請が最も多い一方で、300万円を超える規模の採択も12,000件以上あり、比較的大規模なIT導入が進んでいる企業も少なくないことがうかがえます。
第1章|IT導入補助金2025の目的と概要
IT導入補助金2025は、労働生産性向上を目的としたITツールの導入を支援する制度です。企業が導入するソフトウェアやクラウドサービス、関連するコンサルティングや設定費用などが補助対象となります。
また、令和6年度の補正予算により、以下のようなポイントが強化されています。
- 最低賃金近傍の事業者に対する補助率の引き上げ
- IT導入後の「活用支援」も補助対象に含める拡充
- サイバーセキュリティ対策に関する支援の拡大
このように、単なる導入支援にとどまらず、実際の活用やリスク対策までカバーする内容となっています。
第2章|補助の対象となる事業者
IT導入補助金の対象は、一定の資本金または従業員数以下の中小企業・小規模事業者などに限定されています。
たとえば以下のような基準が設けられています:
- 製造業・建設業など:資本金3億円以下、または従業員300人以下
- 小売業:資本金5,000万円以下、または従業員50人以下
- 卸売業:資本金1億円以下、または従業員100人以下
- サービス業:資本金5,000万円以下、または従業員100人以下
- 医療法人、学校法人、NPO法人なども対象条件に合致すれば申請可能 など
詳細はこちらをクリック▼ (2025年6月中小企業庁公開資料より)
①製造業、建設業、運輸業
資本⾦の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主
②卸売業
資本⾦の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主
③サービス業
(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く)
資本⾦の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主
④小売業
資本⾦の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主
⑤ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
資本⾦の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が900人以下の会社及び個人事業主
⑥ソフトウェア業又は情報処理サービス業
資本⾦の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主
⑦旅館業
資本⾦の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が200人以下の会社及び個人事業主
⑧その他の業種(上記以外)
資本⾦の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主
⑨医療法人、社会福祉法人
常時使用する従業員の数が300人以下の者
➉学校法人
常時使用する従業員の数が300人以下の者
⑪商工会・都道府県商工会連合会及び
商工会議所
常時使用する従業員の数が100人以下の者
⑫中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体
上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
⑬特別の法律によって設立された組合又はその連合会
上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
⑭財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益)
上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
⑮特定非営利活動法人
上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
第3章|補助対象となる経費と補助率
補助対象となる主な経費は以下の通りです:
・ソフトウェア購入費(業務支援・会計・決済など)
・クラウドサービス利用料(最大2年分)
・ITツール導入関連費用(設定・マニュアル作成・研修など)
・セキュリティソフト・導入後の活用支援サービス
・ハードウェア費用(PC、タブレット、レジ等)

補助率と補助上限は申請類型や導入するツールの規模により異なりますが、一例としては:
- 補助額:5万円~450万円程度
- 補助率:1/2〜最大4/5(小規模事業者や最低賃金近傍の事業者に対して高率)
導入するITツールの機能数や、業務プロセスの数によっても補助額が変動します。
第4章|類型別に見る申請の種類
IT導入補助金2025では、以下のような類型に分かれています:
● 通常枠
最も一般的な類型で、ソフトウェア・クラウドサービス・導入関連費用が補助対象になります。
● インボイス枠
インボイス制度対応のITツール導入を支援する類型。会計・受発注・決済機能などが対象です。
● インボイス枠(電子取引類型)
取引先である中小企業等に対し、発注者がITツールを無償供与する場合に補助されます。大企業も申請可能。
● 複数社連携IT導入枠
商店街や地域団体など、複数の事業者が連携してIT導入を進める場合に利用できる特別な枠です。
● セキュリティ対策推進枠
サイバーインシデントへの対策として、「お助け隊」サービスの導入支援を受けられる類型です。
第5章|申請から補助金受領までの流れ

申請者(中小企業等)は、国に登録された「IT導入支援事業者」のサポートを受けながら申請を行います。
おおまかな流れは以下の通りです:
- 支援事業者を選定し、導入するITツールを決定
- 事業計画や見積などをもとに申請書を作成
- 審査・採択を経て、ITツールを契約・導入
- 導入後に実績報告を行い、補助金の交付を受ける
補助対象となるツールは、あらかじめ事務局に登録されたものに限られます。
第6章|申請時の注意点と要件
補助率を高くするためには、以下のような条件を満たす必要があります:
- 最低賃金近傍(地域最低賃金+50円以内)で従業員の30%以上を雇用している
- 業務プロセスが4つ以上のITツール導入を行う
- 事業計画期間内に給与総額を年平均1.5%以上増加させるなどの賃上げ計画を策定する
こうした条件を満たすことで、補助率が1/2から2/3へと引き上げられる場合があります。
おわりに|まずはIT導入支援事業者に相談を
IT導入補助金は、単なるIT投資ではなく、業務改善や経営の変革を目指す企業にとって有効な支援制度です。申請には専門的な知識が必要な場合もあるため、まずは購入を予定しているIT機器やシステムのメーカーや販売代理店、IT導入支援事業者に相談し、自社の状況に適した申請計画を立てることをおすすめします。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。