補助金申請において、事業計画書の説得力は採択の可否に大きく影響します。特に中小企業や個人事業主にとって、限られた資源の中で事業の方向性を明確にすることは重要です。その際に役立つのが「SWOT分析」という手法です。
SWOT分析は、事業の現状を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点から整理することで、戦略的な計画を立てるための分析ツールです。この記事では、SWOT分析の基本から補助金申請への活用方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
🔍 SWOT分析とは?4つの視点で事業を整理する方法
SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境をそれぞれプラス要因・マイナス要因に分けて整理する方法です。以下のように分類されます。
- 内部環境のプラス要因:強み(Strength)
- 内部環境のマイナス要因:弱み(Weakness)
- 外部環境のプラス要因:機会(Opportunity)
- 外部環境のマイナス要因:脅威(Threat)
内部環境とは、自社が持つ資産や技術力、ブランド力など、自社の努力や工夫で改善可能な要素です。一方、外部環境は市場の動向や法律の改正、競合の動きなど、自社ではコントロールできない要因を指します。
この4つの視点から自社の状況を整理することで、事業の方向性が明確になり、補助金申請に必要な事業計画書の説得力が高まります。
補助金などで重視される「総合評価の高い経営計画」とは
小規模事業者持続化補助金の第18回公募要領の計画審査の解説において次のような解説があります。
—
経営計画・補助事業計画について、以下の項目に基づき加点審査を行い、総合的な評価が高いものから順に採択を行います。
①自社の経営状況分析の妥当性
○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みや弱みも適切に把握しているか。
②経営方針・目標と今後のプランの適切性
○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みや弱みを踏まえているか。
○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)や顧客ニーズを捉えたものとなっている
か。
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この内容はどこかで見たような内容ですね・・・・
そうです。これは基本的にSWOT分析等のマーケティング分析を実施しその結果を経営計画として記載して下さいということです。
補助金の事業計画書に何を書いていいか分からないとおっしゃる方は、まず、このSWOT分析分析から初めて見て下さい。採択率がぐっと高まります。
💪 「強み」の見つけ方:自社の魅力を再発見しよう
「うちには特別な強みはない」と感じる方も多いかもしれません。しかし、事業が継続しているという事実は、それ自体が強みの証です。強みを見つけるには、以下のような視点が有効です。
まずは顧客の視点から考えてみましょう。「なぜお客様は自社の商品を選ぶのか」「なぜ取引先は継続して付き合ってくれるのか」といった問いを立てることで、顧客が感じている価値=強みが見えてきます。アンケートやヒアリングも有効な手段です。
次に、競合他社との比較です。競合と比べて自社が優れている点は何かを探ることで、差別化ポイントが明確になります。競合のホームページや店舗を調査することで、客観的な視点が得られます。
さらに、従業員や支援者の意見も参考になります。部門ごとに異なる視点から強みを見つけることができ、思わぬ発見につながることもあります。
⚠️ 「弱み」の見つけ方:課題を明確にして改善へつなげる
弱みは、強みの裏返しとも言えます。日々の経営の中で感じる課題や悩みは、弱みのヒントになります。顧客・競合・従業員などの視点から、自社のウィークポイントを整理してみましょう。
注意すべき点は、「弱み」と「脅威」を混同しないことです。たとえば「立地が悪い」は自社で改善可能な内部環境の弱みですが、「地域の少子高齢化」は外部環境の脅威です。この違いを明確にすることで、適切な対策が立てられます。
🌍 「機会」と「脅威」の見つけ方:外部環境を味方につける
外部環境の分析は、マクロ環境とミクロ環境の2つの視点から行います。
マクロ環境では、「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの要素を確認します。たとえば、法律の改正や新技術の登場、生活スタイルの変化などが該当します。新型コロナウイルスによる生活様式の変化は、典型的なマクロ環境の変化です。
ミクロ環境では、競合の動向や市場規模、消費者のニーズなど、自社に直接関係する外部要因を分析します。マクロ環境とミクロ環境は密接に関連しており、両方を踏まえて「機会」と「脅威」を整理することが重要です。
🔄 クロスSWOT分析で戦略を立てる:4つの方向性を理解しよう
SWOT分析で得られた情報をもとに、戦略を立てる方法が「クロスSWOT分析」です。これは、内部環境と外部環境を組み合わせて、以下の4つの戦略パターンを導き出す手法です。
- 強み × 機会(積極化戦略):強みを活かして機会に対応する
- 強み × 脅威(差別化戦略):強みを使って脅威に対抗する
- 弱み × 機会(改善戦略):弱みを補強して機会を活かす
- 弱み × 脅威(防衛・撤退戦略):弱みと脅威に備えて守りを固める
特に「強み × 機会」の積極化戦略は、補助金申請において最も重要です。限られた経営資源の中で、どのビジネスチャンスに注力すべきかを明確にすることで、実現可能性の高い事業計画が作成できます。
🎯 SWOT分析をテーマ別に活用する:製品・採用・販路など
SWOT分析は、経営全体だけでなく、テーマごとにも活用できます。たとえば、新製品の開発では「製品」の強み・弱み・機会・脅威を分析し、採用活動では「人材確保」の視点からSWOT分析を行うことで、具体的な戦略が立てやすくなります。
このように、SWOT分析は多面的な視点から事業を見直すことができるため、補助金申請に限らず、日常の経営判断にも役立つツールです。
✅ まとめ:SWOT分析を活かして説得力ある事業計画書を作成しよう
SWOT分析は、初心者でも取り組みやすく、事業の現状を整理するのに非常に有効な手法です。補助金申請においては、事業計画書の説得力を高めるために、SWOT分析を活用することが重要です。
自社の「強み」を再確認し、「弱み」を改善しながら、「機会」を逃さず、「脅威」に備える。こうした戦略的な視点を持つことで、補助金の採択率を高めることができるでしょう。
まずは、紙とペンを用意して、自社のSWOT分析を始めてみてください。補助金の広場では、補助金申請に役立つ情報を多数掲載しています。ぜひ参考にして、事業の可能性を広げていきましょう。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。