
士業として独立・開業を目指す際に、まず検討すべき重要な項目のひとつが「事務所の形態」です。事務所の所在地や形態は、士業登録の際の基準だけでなく、顧客からの信頼性や業務の効率にも大きな影響を与えます。本記事では、士業が事務所を構える際に検討できる主な選択肢と、それぞれの特徴・注意点についてご紹介します。
事務所形態の主な種類と特徴
1. レンタルオフィス(サービスオフィス)
家具やネット環境が整っており、契約後すぐに業務が始められるオフィスです。秘書・受付サービスや会議室が併設されている場合もあり、士業事務所としても使いやすい環境が整っています。
メリット
- 初期投資が少なく開業できる
- 一等地の住所を使える
- 会議室や受付対応も整備されていることが多い
デメリット
- 面積あたりの費用は高め
- 長期的にはコスト負担になる可能性あり
2. シェアオフィス・コワーキングスペース
複数の利用者でオフィス設備を共有する形態です。専用デスクや個室を設けている施設もあり、柔軟に利用できます。
メリット
- 費用が比較的安価
- 起業家や他士業とのネットワーキングも可能
- 一部は法人登記も可能
デメリット
- プライバシー・機密保持への配慮が必要
- 常駐性・専有性に制限がある場合も
3. 自宅兼事務所
居住している住宅の一部を事務所として使用する形態です。顧客の来所が少ない場合や、コストを抑えたい場合に選ばれることが多いです。
メリット
- 家賃がかからない(または一部で済む)
- 通勤不要で時間効率が良い
- 一人開業に向いている
デメリット
- 顧客対応に向かないケースあり
- 家族や生活スペースとの区切りが必要
- プライバシー・信頼性の問題が出やすい
4. バーチャルオフィス
登記用住所や郵便物の転送、電話対応などを提供するサービスです。ただし、士業として登録する場合には、所属団体によって利用可否が異なるため注意が必要です。
メリット
- コストが非常に低い
- 都市部の住所が利用可能
- 郵便物や電話対応などのサービスもあり
デメリット
- 実際の執務スペースがない
- 顧客対応が難しい
- 利用可否や要件を事前に確認する必要がある
5. 賃貸による独立型事務所
一般的な賃貸オフィス物件やマンションの一室を借りて、自分専用の事務所として使用するスタイルです。信頼性やブランディングを重視する場合に適しています。
メリット
- 完全に独立した事務所として機能
- 自由な内装・設備が可能
- 顧客に安心感を与えやすい
デメリット
- 初期費用・月額費用が高くなりやすい
- 長期契約が基本で、柔軟性に欠ける場合あり
6. 他士業・企業との共同事務所・間借り
他の士業や企業とオフィススペースを共有したり、空いている部屋を借りて使うスタイルです。業務連携やコスト削減のメリットがあります。
メリット
- 家賃・設備のコストを分担できる
- 他の士業との連携や紹介が得られる可能性
- 起業初期の資金負担が軽くなる
デメリット
- 独立性が保ちにくい場合あり
- 契約関係の明確化が必要
事務所選びのポイント
士業としての業務を円滑に進めるためには、以下の点を考慮して事務所形態を選ぶことが重要です。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
士業の事務所要件を満たしているか | 士業が事務所を構える際は、その士業の事務所要件を満たしているかを必ずご確認下さい。 事務所の独立性要件、廊下から自社事務所の位置関係に関する要件、看板の設置の有無やその方法など士業毎に様々な事務所ルールがあります |
登記が可能か | 所属団体の要件に応じて、法人や個人の事務所登記が可能かを確認 |
常駐・執務ができるか | 業務を実際に行うスペースとして使えるか |
顧客対応ができる環境か | 来客対応、面談スペースの有無など |
信頼性を保てるか | 顧客や他士業から見た印象、住所の見え方など |
コストとのバランス | 初期費用・月額費用・将来の拡張性を考慮 |
将来的な変更のしやすさ | 事業拡大・従業員雇用・移転への柔軟性 |
当社からのアドバイス:
全ての契約条件は交渉可能と考えましょう
以前に不動産業界や関連業界にいらっしゃった方でしたらご存じですが、賃貸契約や同等のサービスを利用するにあたり契約する場合、すべては交渉の余地があると考えましょう。
例えば一般的な賃貸借契約により事務所を借りる場合
・敷金
・礼金
・入居日
・入居日から実際に利用するまでの間に発生する家賃
・更新期間(例えば2年契約を3年に延長すると更新料負担が軽減します)
・各種使用料 など
長期的な視点で見ると、これにより数十万~数百万円の経費削減が図れる場合があります。新しく事務所を借りるなど契約をする場合は、貸主から提示された条件を全て鵜呑みにせず、契約前に交渉可能な事柄がないかを必ず確認しましょう。
まとめ
士業としての独立・開業を成功させるためには、単に「安い」「便利」という理由だけで事務所を選ぶのではなく、自身の業務形態や将来の展望、信頼性とのバランスを踏まえて慎重に判断することが求められます。
また、士業によっては事務所の独立性・常駐性などが登録要件に含まれる場合があります。事務所の契約や形態を確定する前に、必ず所属予定の団体(弁護士会、税理士会、行政書士会など)に確認することをおすすめします。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。