銀行融資初心者の方にむけて日本政策金融公庫の申込ステップを解説
この記事では、日本政策金融公庫の融資制度について、初心者でも迷わず申込できるように、申込から融資実行までの流れをステップごとに解説します。特に創業・開業を目指す方や、個人事業主として資金調達を検討している方に向けて、必要書類の準備方法や面談のポイント、審査の注意点などをわかりやすく紹介します。この記事を読むことで、融資申込の不安を解消し、スムーズな資金調達の第一歩を踏み出せるようになります。
日本政策金融公庫とは?初心者でも利用できる公的融資制度
日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関であり、民間の金融機関では対応が難しい創業期や小規模事業者向けの融資を専門的に取り扱っています。特に「国民生活事業部門」では、個人事業主や中小企業の経営者に対して、無担保・無保証人で利用できる融資制度を提供しており、創業資金や運転資金、設備資金など幅広い用途に対応しています。
民間金融機関と異なり、事業の将来性や社会的意義を重視した審査が行われるため、事業経験が浅い方でも、しっかりとした計画書を用意すれば融資を受けられる可能性があります。創業支援の一環として、無料相談やセミナーも開催されており、初心者でも安心して利用できる体制が整っています。
当社からのアドバイス:
▶事業資金確保にはまず「日本政策金融公庫」を検討すべき!
民業圧迫という言葉がありますが、この銀行は通常の民間の金融機関と異なり国が実質運営しているような組織です。その為、金利や創業融資審査などの面で民間銀行より有利な条件を提示している事が多いです。
事業融資調達の際、銀行選びに困ったらまずは日本政策金融公庫を検討しましょう。
融資申込の流れをざっくり把握しよう(全体工程)
日本政策金融公庫の融資申込は、大きく分けて以下のステップで進行します。
- 申込方法の選択(インターネット or 郵送)
- 必要書類の準備と提出
- 担当者との面談
- 審査結果の通知
- 契約手続き
- 融資金の入金
申込から融資実行までの期間は、通常2週間〜1ヶ月程度が目安です。書類の不備や面談の内容によっては、さらに時間がかかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。
ステップ①:申込方法の選び方と必要書類の準備
日本政策金融公庫への融資申込は、主に「インターネット申込」と「郵送申込」の2つの方法があります。どちらもメリット・デメリットがあるため、自身の状況に応じて選択することが重要です。
インターネット申込は、24時間365日対応しており、スマートフォンからも手続き可能です。書類の電子データ化が必要ですが、郵送費用がかからず、手続きのスピードも比較的早い傾向があります。一方、郵送申込は紙の書類をそのまま提出できるため、電子化に不安がある方には適しています。ただし、郵送費用や到着までの時間がかかる点には注意が必要です。
申込方法を選んだら、次は必要書類の準備です。提出書類は申込者の属性や申込内容によって異なりますが、以下のような書類が一般的に求められます。
- 借入申込書:融資希望額や返済期間などを記載する基本書類。
- 創業計画書:創業前または創業間もない方が提出。事業の動機や見通しを記載。
- 企業概要書:創業計画書を提出しない場合に必要。事業内容や取扱商品などを記載。
- 確定申告書(直近2期分):個人事業主の場合。事業の実績を示す重要書類。
- 決算書(直近2期分):法人の場合。損益計算書や貸借対照表など。
- 見積書:設備資金を申込む場合に必要。
- 本人確認書類:運転免許証やパスポートなど。
- 印鑑証明書:契約時に必要。市区町村役場または法務局で取得。
- 預金通帳のコピー:送金先口座の情報確認用。
これらの書類は、申込者の状況によって追加・省略されることがあります。特に創業前の方は、創業計画書の内容が審査の大きなポイントとなるため、事業の実現性や収支見通しを具体的に記載することが重要です。
当社からのアドバイス:
▶創業期は「融資獲得における特別なチャンス」と捉えてください
事業を開始すると、毎年の決算を通じて売上、仕入、家賃、人件費などの経営指標が積み上がっていきます。銀行の融資担当者は、多くの企業の財務データを見ており、業界全体の傾向や推移を把握しています。そのため、例えば年間1%しか成長していない業界において「毎年売上50%アップ」といった非現実的な事業計画を提出しても、信用されることはほとんどありません。
一方、創業期は過去データが存在しないため、しっかりとした根拠があれば、高い売上予測でもある程度認められる余地があります。
つまり、創業期こそが希望する融資額を得るための重要なタイミングであり、将来の運転資金にも余裕を持たせる意味でも、現実性と説得力を兼ね備えた計画を作成することが大切です。
🧾 面談後の流れと注意点
1. 審査結果の通知
- 面談後、通常1〜2週間以内に審査結果が電話または郵送で通知されます。
- 承認された場合は、融資額・金利・返済期間などの条件も併せて伝えられます。
2. 契約手続き
- 承認後は「金銭消費貸借契約書」に署名・押印します。
- 電子契約も可能ですが、事前に通帳写しや本人確認書類の提出が必要です。
3. 融資実行と入金
- 契約完了後、指定口座に融資金が振り込まれます。
- 使途は申告した内容に限られるため、目的外利用は厳禁です。
4. 返済開始
- 「返済予定表」に基づき、毎月の返済が始まります。
- 口座引き落としが基本なので、残高管理はしっかりと。
✅ 面談通過のための最終チェックポイント
項目 | チェック内容 |
---|---|
事業計画 | 数字に根拠があるか?競合との差別化は明確か? |
資金使途 | 見積書などで裏付けがあるか?過不足はないか? |
返済能力 | キャッシュフローで返済可能か?他の借入とのバランスは? |
誠実さ | 面談時の態度・言葉遣い・提出書類の整合性 |
ステップ②:面談の流れとよくある質問への対策
日本政策金融公庫への融資申込後、次の重要なステップが「面談対応」です。この面談は、提出した書類の内容をもとに、担当者が申込者の事業計画や資金使途、返済能力などを直接確認する場となります。面談の結果が審査に大きく影響するため、事前準備が非常に重要です。
面談は通常、申込から約1週間後に設定されます。日時は平日9時〜17時の間で調整され、原則として申込者本人が出席する必要があります。面談場所は最寄りの日本政策金融公庫の支店で行われ、事業内容に応じて現地調査が行われることもあります。
面談当日は、担当者から事業の概要や創業の動機、資金の使途、返済計画などについて質問されます。特に創業計画書に記載した内容に基づいて質問されることが多いため、提出書類との整合性を意識した回答が求められます。
よくある質問としては、「創業の動機は?」「ビジネスモデルは?」「顧客ターゲットは?」などが挙げられます。これらの質問には、具体的なエピソードや数値を交えて回答することで、事業の実現性や熱意を伝えることができます。
また、面談時には「預金通帳」「源泉徴収票」「本人確認書類」などの持参を求められる場合があります。事前に担当者から指示された書類を確認し、忘れずに準備しておきましょう。
面談に不安がある方は、想定問答を用意しておくと安心です。創業計画書の内容をもとに、質問と回答をシミュレーションしておくことで、当日の緊張を和らげ、スムーズな対応が可能になります。
ステップ③:審査結果の通知とその後の対応
面談が終わると、いよいよ審査結果の通知を待つ段階に入ります。日本政策金融公庫では、面談後に書類の最終確認や事業の実現性の評価が行われ、融資の可否が決定されます。審査結果の通知は、通常面談から約2週間後が目安とされています。
通知方法は、審査の結果によって異なります。審査に通過した場合は、電話連絡または郵送で通知されることが多く、郵送の場合は借用証書などの契約書類が同封されています。一方で、審査に落ちた場合は、原則として電話で通知されることが一般的です。以前は郵送での通知もありましたが、現在は電話による連絡が主流となっています。
審査結果の通知が遅れている場合は、書類の不備や担当者の繁忙、連休などが影響している可能性があります。特にゴールデンウィークや年末年始などの大型連休を挟むと、審査期間が延びる傾向があるため、余裕を持ったスケジュールで申請することが大切です。
審査に通過した場合は、次に契約手続きへと進みます。契約に必要な書類は、郵送または電子契約サービスを通じて提出します。主な契約書類には以下のようなものがあります:
- 借用証書(署名・捺印・収入印紙の貼付が必要)
- 印鑑証明書(個人事業主は市区町村役場、法人は法務局で取得)
- 預金通帳のコピー(送金先口座の情報確認用)
- 預金口座振替利用届(返済用口座の登録)
電子契約を希望する場合は、メールで送られてくるURLからログインし、画面の指示に従って電子署名を行います。電子契約では収入印紙が不要となり、手続きがスピーディーに進むというメリットがあります。
契約書類が公庫に到着し、内容に不備がなければ、原則3〜4営業日以内に融資金が指定口座に振り込まれます。ただし、送金手数料や団体信用生命保険の掛金が差し引かれるため、実際の入金額が借用証書の金額と異なる場合があります。
融資までにかかる期間とスケジュールの立て方
日本政策金融公庫で融資を受ける場合、申込から融資金の入金までにかかる期間は平均して約1か月程度とされています。ただし、申込者の準備状況や書類の完成度、面談の内容によっては、さらに早まることもあれば、逆に長引くこともあります。
融資までの流れをスムーズに進めるためには、各工程にかかる時間の目安を把握しておくことが重要です。以下は、一般的なスケジュールの例です。
- 申込から面談まで:約1週間
書類提出後、担当者から面談日時の連絡があります。早ければ数日で面談日が決まることもあります。 - 面談から審査結果の通知まで:約2週間
面談後、書類の最終確認と審査が行われ、結果が電話または郵送で通知されます。 - 契約手続きから融資実行まで:約1週間
契約書類を提出後、書類に不備がなければ4営業日以内に融資金が振り込まれます。
このように、各工程を順調に進めた場合でも、最低3週間〜1か月程度はかかると見込んでおくと安心です。特に、創業前や開業直後の方は、事業計画書の作成に時間がかかることがあるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。
また、ゴールデンウィークや年末年始などの大型連休を挟むと、審査や契約処理が遅れる可能性があるため、申込時期にも注意が必要です。
動画での説明をご希望の方はこちら
こちらは当社が主催する「補助金・融資コンサルタント育成講座」の講師であるアイオン行政書士事務所特定行政書士の畠中先生が以前作成した「日本政策金融公庫の融資申込手続きの流れ」を動画で解説したものです。こちらも是非ご活用下さい。
日本政策金融公庫 創業融資の流れ(個人事業主・小規模事業者)
こちらは以前作成した創業融資の流れを表形式にしたものです。全体の流れの把握にご活用下さい。
申込から入金までの流れ
融資申し込み
申込の為の必要書類を提出します。
※インターネット申込の場合は一部異なります。
提出書類
必要な提出書類は下記の通りです。
・借入申込書
・創業計画書
・購入を検討している機器や出店予定先の物件のチラシなど参考資料・見積書
・不動産購入の場合は登記簿謄本などの証明資料
・その他発生する費用があればその見積書
・法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
既に事業を営んでいる場合
・企業概要書(創業計画書を提出した場合、企業概要書の提出は不要)
・直近2期分の確定申告書(個人事業主の場合)
・直近2期分の決算書一式(法人の場合)
・直近の試算表(直近決算から6か月以上経過している場合・開業したばかりで決算を終えていない場合)
審査面談:公庫担当者実施
公庫の窓口で担当者との面談があります。
面談内容
・事業計画、融資される資金の使用目的、資産や負債などについて質問されます。
※事業計画について説得力のある説明が求めらる場面です。
※遅延のない返済実績があれば、電話でのやり取りで審査面談が完結する場合もあります。
必要書類
必要な提出書類は下記の通りです。
・本人確認書類(運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)のコピー)
・許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる・営む予定の場合)
・預金通帳(直近6か月)
・源泉徴収票(新規開業予定の個人等の場合)
・住宅ローンや自動車ローンなどがあればその支払・契約などが分かる資料
・固定資産税の領収書(自宅が持ち家の場合)
・賃貸契約書(自宅が賃貸の場合)
・所得税、公共料金、家賃の支払いなどが確認できる資料
審査:融資が決定!
融資が決定すると融資に必要な借用証書などの書類が送付されてきます。
契約手続き
返済開始日などをよく考えて契約を確定します。
入金
指定した金融機関に融資が送金されてきます。
必要書類フォームの取得方法
そのような方向けに日本政策金融公庫では各種必要書類の書式を公開しています。
いくつかリンクを記載しておくのでご活用下さい。
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・借入申込書
借入申込書記入例はこちら
・借入申込書記入例
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・創業計画書
居酒屋開業予定の方にオススメ
・創業計画書記入例(居酒屋)
美容室開業予定の方にオススメ
・創業計画書記入例(美容業)
中古車販売店開業予定の方にオススメ
・創業計画書記入例(中古自動車販売業)
衣料品店・子供服店開業の方にオススメ
・創業計画書記入例(婦人服・子供服小売業)
IT会社開業の方にオススメ
・創業計画書記入例(ソフトウェア開発業)
内装工事業開業の方にオススメ
・創業計画書記入例(内装工事業)
学習塾・英会話学校・進学塾開業の方にオススメ
・創業計画書記入例(学習塾)
歯科医院・内科医院など開業の方にオススメ
・創業計画書記入例(歯科診療所)
通所介護サービス・介護予防通所介護サービス(デイサービス)開業予定の方にオススメ
・創業計画書記入例(介護サービス)
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記入フォームはこちら
・企業概要書
食品スーパー開業予定の方にオススメ
・企業概要書記入例(各種食料品小売業)
化粧品製造業開業予定の方にオススメ
・企業概要書記入例(化粧品製造業)
運送業開業予定の方にオススメ
・企業概要書記入例(一般貨物自動車運送業)
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全体を一度ご覧になりたい方にオススメ
・国民生活事業(借入申込書等ダウンロード)
まとめ|日本政策金融公庫の融資をスムーズに受けるために
日本政策金融公庫の融資制度は、創業や事業拡大を目指す経営者や個人事業主にとって、非常に心強い資金調達の選択肢です。特に、民間金融機関では対応が難しい創業初期や小規模事業者に対して、無担保・無保証人での融資や長期返済の柔軟な条件が用意されている点は大きな魅力です。
申込から融資実行までの流れは、申込方法の選択、必要書類の準備、面談対応、審査結果の通知、契約手続き、そして融資金の入金という一連のステップで構成されています。それぞれの工程には注意点があり、特に創業計画書の内容や面談での対応が審査の成否を左右する重要なポイントとなります。
融資までの期間は約1か月が目安ですが、書類の不備や連休の影響などで前後する可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。また、融資実行後は返済予定表を確認し、口座残高の管理や返済スケジュールの把握を徹底することで、資金繰りの安定につながります。
初めて融資を受ける方にとっては不安も多いかもしれませんが、事前に情報を整理し、必要書類を揃え、面談に向けた準備をしっかり行えば、スムーズな融資獲得が可能です。さらに、専門家の無料診断サービスなどを活用することで、自身の状況に合ったアドバイスを受けることもできます。
資金調達は事業の成長に欠かせないステップです。日本政策金融公庫の制度を正しく理解し、計画的に活用することで、あなたのビジネスの可能性を大きく広げることができるでしょう。この記事がその第一歩となれば幸いです。応援しています。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。