はじめに：補助金申請とAI活用の広がり
近年、AI技術の進化により、事業計画書の作成や市場調査などの業務を効率化できるツールとして「ChatGPT」が注目されています。補助金申請においても、ChatGPTを活用することで、作業の一部をスムーズに進められる可能性があります。
しかし、補助金申請は制度やルールが頻繁に変更されるため、AIだけに頼るのは非常に危険です。本記事では、ChatGPTを補助金申請に活用する際の「使える場面」と「絶対に注意すべき点」をわかりやすく解説します。
ChatGPTとは？補助金申請に使える機能の概要
ChatGPTは、自然な文章を生成するAIチャットツールです。質問に答えたり、文章を整えたり、アイデアを出したりすることが得意で、ビジネスの場面でも広く活用されています。
補助金申請においても、ChatGPTは以下のような場面で活用できます。
✅ChatGPTを活用すべきポイント
市場調査や競合分析の下調べ
補助金申請では、事業の必要性や市場性を説明する場面があります。ChatGPTは、業界の動向や競合の特徴などを調べる際の「たたき台」として有効です。例えば、「国内の小規模飲食店の課題は？」といった質問に対して、一般的な傾向を整理してくれます。
経営課題の整理と言語化
自社の課題や強みを言語化するのが苦手な方も多いですが、ChatGPTに「売上が伸び悩んでいる理由を整理したい」と伝えると、論理的な構成で文章を提案してくれます。自分の考えを整理する補助ツールとして活用できます。
文章の構成や表現のブラッシュアップ
事業計画書の文章がわかりづらい、硬すぎる、逆にカジュアルすぎるといった悩みも、ChatGPTに相談することで改善できます。「この文章をもっと説得力ある表現にして」と依頼すれば、自然な言い回しに整えてくれることもあります。
審査員視点でのチェック支援
審査員が読みやすい構成や、伝わりやすいポイントを意識した文章にするためのアドバイスも、ChatGPTから得られることがあります。もちろん、最終的な判断は人間が行うべきですが、客観的な視点を得る手段として有効です。
⚠️ChatGPT活用時の注意点
ChatGPTは便利なツールですが、補助金申請においては「使い方を間違えると致命的なミスにつながる」こともあります。以下の点には十分注意しましょう。
公募要領の頻繁な更新に追いつけない
補助金制度は、数週間〜数ヶ月単位で公募要領（申請ルールブック）が更新される場合があります。ChatGPTは最新の情報を自動で反映するわけではないため、古い情報をもとに書類を作成してしまうリスクがあります。
生成AIによる補助金申請書の限界について
弊社が補助金を審査する側の方からヒヤリングしたところでは、昨今、一部の申請者が補助金申請書をすべて生成AIに作成させて提出したと思われるケースが見受けられるそうです。しかし、専門家が見れば、そのような申請書は一目で判別可能です。そして、そういった申請書では残念ながら採択される可能性は極めて低いと考えられます。
不採択となる主な理由は
1）申請書が最新の公募要領に記載された要件を十分に満たしていない。2）申請書全体の整合性が取れていない内容となっている場合がある。
3）一般的な業界の内容などの記述ばかりで、実際に必要な申請する会社の独自性や競争力等についての記載が少ない、又は、全くない。など
生成AIは、あくまで公開されている情報の中からアクセス数の多い記事などを「価値のある情報」として優先的に参照し、文章を生成します。そのため、内容が正確であるとは限らず、また、これが最も肝心ですが最新の制度やルールに即していないことが多々あります。
ChatGPTなどの生成AIを活用する際は、生成された文章が不正確な情報に基づいている可能性があることを十分に理解した上で、必ず人の目による確認と修正を行うことが不可欠です。申請書は、制度の趣旨や要件を的確に捉えた上で、申請者自身の事業内容や目的に即した説得力のある内容に仕上げる必要があります。
最新の制度変更や提出様式への非対応
提出様式や必要書類のフォーマットが変更されていても、ChatGPTはそれを認識できません。結果として、形式不備で申請が却下される可能性もあります。
書類の責任は申請者自身にある
AIが作成した文章であっても、提出するのは申請者本人です。誤った情報や不適切な表現が含まれていた場合、その責任はAIではなく申請者にあります。
AIの提案をそのまま使うリスク
ChatGPTの提案はあくまで参考です。内容を精査せずにそのまま使うと、事業の実態と合わない文章になってしまうことがあります。必ず自分の言葉で確認・修正を行いましょう。
結論：ChatGPTは補助金申請の“補助”ツールに留めるべき
ChatGPTは、補助金申請における「情報整理」や「文章のブラッシュアップ」など、補助的な役割では非常に有効です。しかし、申請書の作成を丸投げするのは絶対に避けるべきです。
AIは万能ではなく、制度の細かな変更や審査基準のニュアンスを理解することはできません。あくまで「人間の判断と組み合わせて使う」ことが重要です。
補助金申請は専門家との連携が成功の鍵
補助金申請は、制度の理解・書類の正確性・事業の実現性など、複数の要素が求められます。ChatGPTを活用しつつ、専門家のアドバイスを受けることで、申請成功率を高めることができます。
補助金の広場の活用方法：正確な情報と専門サポートの提供
弊社が運営する「補助金の広場」では、最新の補助金情報や申請サポートを提供しています。ChatGPTで整理したアイデアをもとに、専門家と一緒に申請書を仕上げることで、より確実な申請が可能になります。
まとめ：AIと人の力を組み合わせて、確実な申請を目指そう
ChatGPTは、補助金申請の効率化に役立つツールですが、使い方を誤ると申請失敗につながる危険性もあります。AIの力を正しく使い、人間の判断と専門知識を組み合わせることで、より確実で効果的な申請が可能になります。
補助金申請は「人とAIの協働」が成功の鍵です。ChatGPTを賢く使いこなし、あなたの事業を次のステージへと導きましょう。
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この記事を書いた人
経産省 認定支援機関 株式会社エイチアンドエイチ
代表取締役 畠中 均(はたなか ひとし)
大手企業を退職後、20代で起業しゼロから複数の事業を展開。現在は、25年以上の経営経験を活かし、認定支援機関として現場経験豊富な経営者としての目線で中小企業支援を行うほか、士業・コンサル向けに中小企業支援の実践的ノウハウを学べる機会の提供にも注力している。